新潟県旅館ホテル組合の柳一成理事長(松之山温泉・ひなの宿ちとせ社長)に同県宿泊業の課題、組合の今年度の取り組みを聞いた。
――宿泊・観光業界全体の課題について、どう捉えているか。
先の見通しが立たない状況だ。エネルギーなど諸物価の高騰、紛争の拡大、自然災害など、不安定要素が多く、経営者のマインドを委縮させている。
――実際の影響は。
原油問題による資材不足、ガソリン価格高騰による観光客の減少など、影響は多岐にわたる。県民対象の新潟県版Go Toトラベルが5月中旬にスタートしたばかりだが、上限3千円の割引という内容で、お客さまの動きは良いものの、こうした割引施策は後で反動が出ることもあり、手放しで喜べない。
――近年のお客さんの動きについて。
組合が主要温泉地の旅館・ホテルから集めたデータによると、2年ほど前から宿泊者の構成が逆転した。それまでは県内客が県外客を上回っていたが、現在は県外客・インバウンドが多くなっている。問題は県外客が増えたことではなく、県内客が減少していることだ。
――県内客が減っている理由は。
人口減少や高齢化もあるが、特に大きな転換点となったのは3年前の米の不作だ。異常気象により新潟県の一等米比率が大幅に低下した。それまで90%超を維持していた一等米比率が急落し、農家のマインドが著しく落ち込んだ。その影響で、温泉地周辺での忘年会や農繁期終了後の慰労会といった宴会需要が激減した。
新潟県は農家のつながりによる団体旅行・宴会需要が少なからず存在していた。しかし兼業農家が激減し、大規模農家への集約が進む中で、その需要が減った。旅館のスタッフも近隣の兼業農家の方が多かったが、その方々も減少した。お客さまも働き手も、地域から同時に失われているような状況だ。
――組合として、今年度の動きは。
新潟県の「観光振興財源あり方検討会」が6月にスタートし、私もメンバーとして参加する。今年度は4回程度の開催が予定されており、大学教授や専門家、コンサルタントなども参加する予定だ。
――宿泊税が検討されるだろうが、業界としてはどのような姿勢で臨むか。
必ずしも宿泊税ありきではなく、さまざまな財源が考えられる。重要なのは、集めた財源を誰がどのように使うかという議論だ。首長の裁量で使ったり、無駄にばらまいたりするのではなく、域内循環につながる使い方でなければならない。そのためにも、われわれ業界がしっかりとものを言う必要があると考えている。
――他地域で参考となる事例はあるか。
長野県の野沢温泉に注目している。長野県がこの6月から定額制で宿泊税を導入する中、野沢温泉は定率制でスタートしている。これらの事例を踏まえながら、新潟県としての理想形を模索していく。
――財源の議論が必要となる背景には何があるか。
人口が増えない以上、自治体の財政は頭打ちだ。そうなると真っ先に削られるのが観光予算である。福祉やインフラ整備が優先され、観光分野は後回しにされやすい。受益者から財源を確保し、それを地域に還元する仕組みを作ることが、持続可能な観光地経営につながると考えている。
(聞き手=森田淳)

柳理事長




