6月上旬にシンガポールを訪れた。今回の渡航でも羽田空港からの出国時、そしてシンガポールのチャンギ国際空港到着時ともにパスポートへのスタンプが押されることはなかった。どちらも自動化ゲートであり、入国審査官に接することなく通過した。
振り返ってみると、2026年3月以降の海外渡航5回全てで、一度もパスポートにスタンプが押されていない。3月はアメリカ・ロサンゼルス、4月はアメリカ・シアトル、5月はオーストラリア・シドニーとカナダ・バンクーバー、そして6月のシンガポールと海外渡航が続いたが、いずれもスタンプはゼロだった。アメリカは入国審査官による審査となっているが、近年はスタンプが押されない運用となっている。最後に押されたのは、2月にイタリアで開催されたミラノ・コルティナ冬季オリンピック観戦のために渡航した際、ミラノ・マルペンサ空港での入出国時であった。
仕事柄、海外渡航の多い私にとって、かつてパスポートのスタンプは旅の記録そのものだった。2007年から2017年まで使用していた10年パスポートでは、ページが足りなくなり、途中で「増補」の手続きを行ったこともあった。
当時は査証やスタンプ用のページを追加できた。しかし現在は、増補制度が廃止され、ページが不足した場合は新しいパスポートへの切り替え申請、もしくは残存有効期間を引き継いだパスポートを発給してもらう形になっている。
以前は頻繁に海外へ出かける人にとって、パスポートのページ不足は珍しい話ではなかった。国によっては査証や入出国スタンプのために数ページ以上の空白を求めるケースもあった。しかし近年は状況が大きく変わり、私のパスポートも残り有効期間は約1年だが、それでも10ページ以上の余白が残っている。
その最大の理由は、日本を含め世界各国で出入国手続きの自動化が進んだことだろう。日本では自動化ゲート利用が一般的となり、出入国時にスタンプが押されなくなった。希望すれば押印を受けることも可能で、海外旅行保険の適用確認や長期滞在の証明などでスタンプを求める人もいる。
私自身もコロナ禍には万が一に備えてスタンプをもらうことが多かったが、今はほとんど押さずにいる。かつては旅から帰るたびにパスポートを開き、訪れた国々をスタンプで振り返るのが楽しみで、スタンプが毎回増えるのがうれしかったが、今ではその機会も減った。パスポートのスタンプが消えつつあるのは少し寂しい気もする。これも時代の流れなのだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)




