【私の視点 観光羅針盤 524】人口減少社会と観光 石森秀三


私の視点 観光羅針盤

 総務省は5月末に2025年国勢調査の速報値を公表した。日本の総人口は1億2305万人で前回20年調査から約309万人減少。政府による地方創生策のかいなく、人口減少の全国的な広がりと加速が明らかになった。民間有識者による人口戦略会議は50年までに全国1729自治体の約4割にあたる744自治体で20~39歳の女性人口が半滅し、消滅可能性があるという警告を24年に公表。消滅可能性に該当する自治体は子育て支援の充実、若者向けの住宅補助や雇用創出、都会からの移住促進などを行い、交流人口や関係人口拡大を試みているが実現は容易ではない。

 私は、人口減少と高齢化が深刻な中山間地域で、早くから観光によるまちづくりを進めてきた京都府南丹市美山町の成果に注目している。南丹市は06年に4町(園部町、八木町、日吉町、美山町)合併で誕生。3月の男児殺人遺棄事件は園部町で発生している。美山町は南丹市の最北端で福井県と滋賀県に隣接、96%が森林で、人口は約3200人。かつて林業で栄えた地域も1970年代以降は林業の低迷、過疎化・高齢化に苦しんだ。当時の町役場主導で年間約200日のタウンミーティングを重ねた結果、社会環境の変化に惑わされずに自分たちが大切にしている風景を守り生かす「観光によるまちづくり」を目指すことになった。80年代後半から住民主体で景観保全と観光の両立が図られた。

 93年に文化庁重要伝統的建造物群(かやぶきの里)保存地区に選定されるとともに、エコツーリズム推進に尽力することで観光客が増え、体験型プログラムや教育旅行も拡充された。それによって新規雇用が生まれ、移住者の定住が促進されるなどの成果が生じた。

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