【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 8019】旅館・ホテルの未来予想図(3) 青木康弘


 前回コラムでは、未来の旅館・ホテルの現場を多様な担い手が支えるようになることを述べた。今回コラムでは、10年後に人がどうやって宿を知り、予約するのか、集客と予約行動の未来を予想したい。

 足元ではすでに変化が始まっている。楽天トラベルはAIが宿を提案し予約まで導く機能を実装し、Googleはこの5月、AIが利用者に代わってホテルを自動予約する仕組みを発表した。注目すべきは、そのGoogle自身が、検索エンジンの利用は今後大きく減ると見込んでいることだ。検索窓に言葉を打ち込み、表示された候補を比較して選ぶという、20年以上続いてきた行動様式が、いままさに終わりに近づいている。

 10年後を大胆に予想したい。その頃にはスマートフォンさえ古い道具になり、人は音声やメガネ型の端末、あるいはまだ見ぬ装置に、ただ希望を伝えるだけになっているかもしれない。いや、希望を伝える必要すらないかもしれない。AIがその人の過去の旅や好み、家族構成、体調や暮らしぶりまで把握し、本人が探す前に最適な宿を先回りで提案する時代が来る。「来月のこの週末、あなたにはこの温泉宿が合います」とAIのほうから声をかけてくれて、予約までしてくれるのはそう遠い未来の話ではない。

 ならば、人間に見せるためのホームページやSNSは役割を終えるのだろうか。残念ながら、その役割は大きく後退していくと考えられる。美しい写真や凝ったページを人が直接眺める機会は、年々減っていくからだ。これからの時代に問われるのは、人ではなくAIに正確に、そして深く理解される宿であるかどうかである。料理、温泉、もてなし、土地の物語といった自施設の本物の価値を、AIが誤解なく読み取れる形にしておくことが欠かせない。発信の相手が、人からAIへと変わるのだ。

 ただし、心配することはない。AIが先回りで宿を選ぶ時代になるほど、AIが評価する宿の中身そのものが厳しく問われるようになるからだ。取り繕った情報や見栄えだけの演出は、AIにたやすく見抜かれる。本物の体験と本物のもてなしを備えた宿だけが、AIに選ばれ続けることになる。小手先の対策ではなく、宿の真価がそのまま試される時代の到来は、むしろ誠実な経営を続けてきた宿にとって追い風だと言える。

 10年後を見据え、いま何をすべきか。AIに任せられる仕事は大胆に任せ、人にしかできない価値を磨き上げることだ。そのうえで、自施設の本当の姿を飾らず深くAIに理解してもらう準備を、今から始めてほしい。皆さまの未来の宿が選ばれるかどうかは、その誠実な備えにかかっている。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
 
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