エミレーツ・グループ、過去最高益244億ディルハム 「世界で最も収益性の高い航空会社」を維持


湾岸の混乱をものともせず 利益・売上・現金残高すべて過去最高

 エミレーツ・グループは5月7日、2025-26年期(2026年3月31日終了)の年次報告書を発表した。会計年度の最終月に深刻な運航混乱に直面したにもかかわらず、税引前利益・売上高・現金資産のいずれも過去最高を記録。同グループは「世界で最も収益性の高い航空会社」としての地位を維持した。

 税引前利益は前年比7%増の244億ディルハム(66億米ドル)。税引前利益率は16.2%に達した。売上高は同3%増の1,505億ディルハム(410億米ドル)、現金資産は同12%増の596億ディルハム(162億米ドル)。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は411億ディルハム(112億米ドル)と、強固な営業収益性を示した。

 UAEにおける「第二の柱」税制の導入に伴い、今年から同グループに適用されるUAE法人税率が9%から15%へ引き上げられた。課税後の税引後利益は210億ディルハム(57億米ドル)で、前年比3%増となった。

 所有者であるドバイ投資公社(ICD)に対しては、35億ディルハム(10億米ドル)の配当を支払うと発表した。

年度末の混乱を乗り越えた11ヶ月

 エミレーツ航空・グループ会長兼最高経営責任者のシェイク・アハメド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム殿下は、「会計年度の最終月に大きな困難に直面したにもかかわらず、このようなすばらしい業績を達成できたことで、安全性、卓越性、革新、人材、そしてパートナーシップを基盤とするエミレーツ・グループの事業モデルの強靭さと回復力をあらためて示す結果となった」と述べた。

 2月28日、軍事活動によりUAEを含む湾岸地域の民間航空交通が大規模な混乱に見舞われた。エミレーツとdnataは迅速に対応し、従業員と影響を受けた顧客の支援、資産保護、事業継続の確保に取り組んだ。

 シェイク・アハメド殿下は「ドバイは長年にわたるインフラ投資と強固な航空エコシステムによって、政府が民間航空機向けの安全な飛行ルートを迅速に確保できる場所となっている」と説明。混乱後、エミレーツとdnataはDXB(ドバイ国際空港)での運航を段階的に再開しており、現時点では旅客輸送能力は混乱前と比べてまだ低い水準にあるものの、貨物輸送業務は拡大しているとした。

 2025-26年期、グループ全体の投資額は179億ディルハム(49億米ドル)。新型航空機、施設、設備、最新技術への投資として計上された。総従業員数は前年比8%増の130,919人となり、UAE国籍従業員数も4,000人を超えた。

エミレーツ航空の業績

 エミレーツ航空の税引前利益は前年比7%増の228億ディルハム(62億米ドル)で過去最高を更新。税引前利益率は17.4%。売上高も過去最高の1,309億ディルハム(357億米ドル)(前年比2%増)、現金資産は同10%増の549億ディルハム(150億米ドル)に達した。

 税引後の純利益は197億ディルハム(54億米ドル)で、純利益率は15.0%。これはエミレーツ航空史上最高の業績であり、かつ2025-26年期における航空業界全体でも最も優れた業績とされた。

 旅客・貨物の総輸送能力は1%増加し、606億ATKM(有効トンキロメートル)となった。旅客数は5,320万人(前年比1%減)、座席利用率は78.4%(前期78.9%)。旅客単位収益(RPKM)は前期比4%上昇の38.1フィルス(10.4米セント)だった。

 営業費用は前年比2%増。燃料費の割合は全体の29%(前年31%)まで低下し、平均燃料価格が7%下落したことにより、燃料費は前年の326億ディルハム(89億米ドル)から312億ディルハム(85億米ドル)へとわずかに減少した。

 営業キャッシュフローは320億ディルハム(87億米ドル)を計上。事業成長計画を継続的に支える水準を確保した。

機材拡充と客室改修プログラムが着実に進展

 ネットワーク面では、ダナン、杭州、シェムリアップ、深圳の4都市への新規就航を開始。2026年3月31日時点で、グローバルネットワークは80か国152都市に拡大した。32社とのコードシェア提携、117社とのインターライン提携を通じ、1,700以上の都市へのアクセスを提供している。

 当期、エミレーツ航空は15機のエアバスA350型機を導入。同日時点でA350型機は19機を保有し、21都市への路線を運航する。保有機材の合計は277機で、平均使用年数は10.8年。

 2025年のドバイ航空ショーでは、カタログ価格ベースで414億米ドル規模となる追加機材投資を発表した。65機のボーイング777-9型機と8機のエアバスA350-900型機の追加発注。2026年3月31日時点の発注残は367機に達し、内訳はエアバスA350型機54機、ボーイング777X型機270機、ボーイング787型機35機、ボーイング777フレイター型機8機で、2038年まで導入を予定している。

 50億米ドル規模の機材改修プログラムも順調に進み、現在までに改修対象215機のうち91機で全面的な客室リフレッシュが完了。プレミアムエコノミー座席を含む最新の機内設備が導入されている。

 機材調達を支えるため、日本型オペレーティングリース(JOL)、フランス税制リース、輸出信用機関(ECA)支援型スキームなどを活用し、国内外の市場から100億ディルハムの航空機融資を調達した。

機内サービスと地上施設を強化

 11月には機材への高速Wi-Fi導入に向けてStarlinkとの契約を発表。2026年3月31日時点ですでに21機への搭載を完了し、「空の上で最高水準の接続環境」を提供しているとした。今後もさらなる導入機材の拡大を予定する。

 ドバイ国際空港のエミレーツ専用ターミナル3では、ファーストクラス利用客およびスカイワーズ・プラチナ会員専用の新チェックインラウンジ「エミレーツ・ファースト」を開設。成田国際空港と関西国際空港ではファーストクラスおよびビジネスクラス利用客向けの無料送迎サービスを開始し、クラーク国際空港(フィリピン)ではエコノミークラス利用客向けの無料バスサービスも導入した。

 アクセシビリティ面では、さまざまなニーズを持つ旅行者が旅程を計画しやすくするため、emirates.com上に「アクセス性が高く包摂的な旅行ハブ」を新設。自閉スペクトラム症(ASD)の子どもとその家族向けには、世界各地の数十の空港で「模擬旅行体験」を実施した。

 客室乗務員の居住環境整備も進んでいる。完成時に12,000人の客室乗務員が居住可能となる「エミレーツ・キャビン・クルー・ビレッジ」の建設用地確保に向けてドバイ・インベストメント・パークと契約を締結。また、新しい乗務員訓練センターの開設と、25,000人規模の客室乗務員に世界水準のホスピタリティ研修を提供する「エミレーツ・センター・オブ・ホスピタリティ」を立ち上げた。

スカイカーゴは240万トン、専用機網を44拠点へ

 貨物部門エミレーツ・スカイカーゴは、世界中で240万トンの貨物を輸送し、前年比3%増を達成した。売上高は162億ディルハム(44億米ドル)で、エミレーツ全体売上高の12%を占める。旅客単位収益(FTKM)は前年比3%低下。市場競争圧力に加え、特にEC分野における関税の影響を受けた。

 当期中に5機のボーイング777フレイター型機を導入し、貨物専用機による輸送能力が13%拡大。バンコク、ブダペスト、リエージュ、成田への追加就航により、貨物専用機ネットワークを44拠点へ拡大した。

 本年は革新的な国際ドアツードア配送ソリューション「エミレーツ・クーリエ・エクスプレス」を開始したほか、航空・エンジニアリング・防衛・宇宙産業向けに時間厳守の部品輸送を行う専門サービス群「エアロスペース・アンド・エンジニアリング」を新たに立ち上げた。

 2026年3月末時点での貨物専用機はボーイング777フレイター型機13機で、さらに8機の導入を予定している。

dnata、全部門で堅調な成長

 グループ傘下の空港サービス・旅行会社dnataの税引前利益は前年比2%増の16億ディルハム(4億3,700万米ドル)で過去最高。税引前利益率は6.8%。売上高は前年比12%増の236億ディルハム(64億米ドル)となり、こちらも過去最高を記録した。現金資産は前年比28%増の47億ディルハム(13億米ドル)。

 税引後利益は法人税率引き上げの影響により、前年比4%減の13億ディルハム(3億6,700万米ドル)となった。売上高の77%は海外事業によるもので、前年から2ポイント上昇した。

 空港業務(地上支援・貨物取扱)の売上高は112億ディルハム(31億米ドル)。航空機対応回数は前年比12%増の888,793回、貨物取扱量は同2%増の320万トンに達した。

 2025-26年期の投資額は8億5,800万ディルハム(2億3,400万米ドル)。パースおよび西シドニーの新ケータリング施設、アムステルダムの新貨物施設、電動・ハイブリッド地上支援機材の導入などが主な投資先となった。

 本年、dnataはアムステルダムに完全自動化貨物施設を新設。年間60万トンの処理能力を持つ同種施設としては最大級の規模で、投資額は7,000万ユーロに上る。また、オーストラリアとニュージーランドで航空貨物トラック輸送を手がけるWymap Groupを買収。NDC対応予約プラットフォーム「WonderMiles」の株式7%も取得した。

 イタリアでは現地子会社を完全取得後にすべての地上業務を自社ブランド下に統合し、ローマにおける最新型地上支援機材導入に追加2,000万ユーロを投資。ミラノでは新しい貨物施設建設のため2,500万ユーロを投じることを決定した。マンチェスターでは代表的サービス「marhaba」ミート&グリートサービスを開始した。

 ケータリング・小売事業の売上高は前年比13%増の81億ディルハム(22億米ドル)。航空会社顧客向けに1億1,530万食を提供した。22件の契約更新と13件の新規顧客獲得を実現し、エアリンガスの機内販売プログラムを運営する5年間の契約も含まれる。デンパサール国際空港では長期運営契約を通じてインドネシア市場へ事業を拡大した。

 旅行サービス部門の売上高は前年比5%増の41億ディルハム(11億米ドル)。販売された旅行サービスの総取扱高(TTV)は前年比3%増の101億ディルハム(27億米ドル)となった。英国では旅行事業の戦略的見直しを完了し、オンライン旅行ブランドのTravel RepublicおよびNetflightsの売却を発表した。

サステナビリティへの取り組み

 環境面では、エミレーツ航空がドバイの空港における持続可能な航空燃料(SAF)の供給可能性を検討するためENOCグループと覚書(MoU)を締結した。またドバイ航空管制サービス(DANS)およびタレスと共同研究を開始し、到着機の待機旋回削減、UAE空域の運用効率向上、燃料消費の最適化に取り組む。

 エミレーツ・フライト・ケータリング(EKFC)は大規模バイオディジェスターを導入し、埋立廃棄物およびCO2排出量を年間2,000トン削減する取り組みを開始。エミレーツ航空はオーストラリアのグレーター・ブルー・マウンテンズ世界遺産地域内にある7,000エーカーの自然保護区に位置する高級リゾート「エミレーツ・ウォルガン・バレー」に追加5,000万豪ドルを投資すると発表した。

 地域社会貢献では、エミレーツ航空基金が世界各地で13件の支援プロジェクトを実施し、医療支援活動のために500枚以上の航空券を提供した。エミレーツとウィンブルドン選手権は英国の4つのワイルドライフ・トラストと提携し、都市部の恵まれない子どもや若者が自然に触れる機会を増やすことを目的とした複数年・数百万ポンド規模の取り組み「Championing Nature」を開始した。

2026-27年期の見通し

 2026-27年期の見通しについて、シェイク・アハメド殿下は「現時点では、米国、イスラエル、イラン間の軍事活動は、停戦合意の下で中断されている。我々は、敵対行為が早期に明確な形で解決して市場の安定が回復することを願っている」と述べた。

 燃料面ではエミレーツ航空が2028-29年期まで十分なリスクヘッジを講じており、必要な供給量確保に向けてサプライヤーと連携を続けているとした。

 シェイク・アハメド殿下は「エミレーツ・グループは非常に潤沢な現金を備えた状態で2026-27年期を迎えており、それによって、場当たり的なコスト削減策に走ることなく、事業強化計画を推進できる」と強調。「当グループの基盤は強固だ。エミレーツ・グループの実証済みの事業モデルに変わりはない。ドバイが、世界の商業、貿易、そして人の移動の中心地であることに変わりはない」と語った。

 
 
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