アメリカの対イラン軍事侵攻による原油価格高騰に日本中に激震が走っている。ガソリンが値上がりして、家計や輸送業者などを直撃している。原油からできるナフサ不足によって、建築資材や梱包材からビニール袋、食品の容器までが品薄になっているとのニュースを耳にする。
観光旅行業界も例外ではない。燃油サーチャージの引き上げや国内線での適用が旅行需要に水を差す可能性がある。この5月の連休は、近場の国内旅行がにぎわったという。ガソリン代の節約を心がけ、遠方の行楽地へのドライブを控える動きも目立つ。
宿泊施設では光熱費の高騰に頭を悩ます。さらに夏の本格観光シーズンを前に施設のリニューアルを計画していても、建設資材などが品薄で、工事が延期になるケースも生じている。
観光施設ではないが、筆者の知人が住むマンションでは、10年に1回の大規模修繕工事の実施のめどがつかず、理事会が困っていると聞いた。外壁改修をするために、足場を組み、覆いで囲ったまま工事が中断している悲惨なケースもあるらしい。
そんな折、観光関連講座を担当している短大の受講生に、観光と環境に関連する質問をした。ここ数年、毎年尋ねており、小欄でも何度か紹介した。旅館やホテルにチェックインし、温泉や食事で客室を空ける際、照明を消し、エアコンを切るか、そのままにするかという問いだ。以前はスイッチを切って部屋を出るとの答えと、宿泊代を払っているのだからそのままにして出るとの答えが半々程度だった。
しかし、4月半ばの授業で同じ質問をしたところ、ほぼ全員がスイッチを切ると答えた。学生なりにイラン問題による原油価格高騰のニュースに触れ、省エネを心掛けねばならないと感じているのだろう。
限られた人数、20歳前後の若者とはいえ、利用者側の変化を知ることができた。一方、ビジネス側である旅館やホテル、レストランなど接客・サービス業はこの辺のさじ加減が難しい。光熱費高騰を価格に転嫁した場合の客離れが予想されるからだ。
もう一点、非日常空間を提供するというのが、観光や旅行の役割でもある。自宅では味わえないぜいたくの演出といってもいいだろう。
東京都内のシティホテルの広報担当者と話した際、「ここだけの話ですが」と前置きをした上で、こう明かした。「当ホテルは高級感を売り物にしているので、お客さまに省エネをお願いしにくい。客室やレストランなどの館内施設で、照明や室温をケチるわけにはいかない。お客さまの中には暑過ぎる、寒過ぎる、暗過ぎるとクレームをつける方がいらっしゃる」。タクシーに乗った際の運転手との雑談でも、暑さしのぎでタクシーを利用するお客もいるから、「上着着用でちょうどいいくらいの冷房の温度にしないと、お叱りを受けたことがある」という。
確かに接客・サービス業では難しい問題だろう。今回の原油高騰はオイルショックと同等の、いやそれ以上の影響を及ぼすとの見方をする識者もいる。ただ学生が敏感に省エネに反応したように、観光客も省エネに関心を払う良い機会となってほしい。
(日本旅行作家協会常任理事、元旅行読売出版社社長)




