都市と自然の”行き来”がウェルビーイングを高める 宿泊先で「深いリラックス」「内省」充足、自宅と異なる構造が浮き彫りに


 日鉄興和不動産株式会社、株式会社SANU、株式会社JDSCの3社は4月30日、都市と自然を行き来する多拠点生活がウェルビーイングに及ぼす影響とそのメカニズムを科学的に解明する共同研究を進めていることを発表した。あわせて、初期分析によって多拠点生活が心身状態に与える影響の構造的な傾向が明らかになったとして、その結果を公表した。

3割の都市住民が関心 研究の背景

 方の柔軟化や価値観の多様化を背景に、都市住民の生活は単一拠点から複数拠点へと拡張しつつある。国土交通省の調査では、都市住民の約3割が二地域居住に関心を示しており、多拠点生活は現役世代が自ら選ぶ新たなライフスタイルとして広がりを見せている。

 一方で、その心理的・生理的影響を構造的に捉えた研究は、国内外において十分に体系化されていない状況だ。

 本研究は、生活様式の変化を個人の体験レベルにとどまらず社会構造として捉え直し、次世代の住環境・都市設計に資する知見の創出を目的としている。「住まい × 生活フィールド × AI・データ分析」という3つの専門性が交わる、国内でも類例の少ない取り組みだ。

初期分析の調査概要

 今回の初期分析では、都市と自然を日常的に行き来するライフスタイルを実践する2つの属性を対象にオンラインアンケート調査を実施した。

 対象者は「SANU 2nd Home会員196名」と「非会員218名」の合計414名。実施時期は2025年12月。主な調査項目は、ウェルビーイングに関する価値観・大切にしたい時間、自宅および宿泊先での心身状態、多拠点に関わる原体験などだ。

 なお、宿泊先については、SANU 2nd Home会員はSANU 2nd Home施設を、非会員はホテル・旅館等を指す。また、SANU 2nd Home会員は非会員に比べ、自宅外の宿泊頻度が多い傾向にあることが統計的に確認されている(p<0.001)。

「深いリラックス」「自然の体感」への期待 会員で高値

 初期分析で得られた主な示唆のひとつ目は、ウェルビーイングに関わる時間への期待水準の差だ。

 両属性ともにウェルビーイングに関わる時間を重視する傾向は共通して確認された。しかし、「極めて大切」と回答した割合に着目すると、SANU 2nd Home会員が非会員に比べ、多くの項目で高値を示していることが明らかになった(χ二乗検定を用い、有意水準はp<0.05、p<0.01、p<0.001)。

 特に高値が確認された項目は以下の通りだ。

  • 深いリラックス

  • 深い喜び

  • 対人関係

  • 楽しいことへの没頭

  • 趣味・余暇を満喫

  • 自由を実感

  • 自然の体感

 これらの項目において、SANU 2nd Home会員の期待水準の高さが統計的に確認された。

宿泊先と自宅で充足構造が逆転 認知的側面にも差

 2つ目の示唆は、自宅と宿泊先で異なるウェルビーイングの充足構造が確認されたことだ。

 宿泊先では、「深いリラックス」「自然を体感」「自由を実感」「仕事や学習への集中」「内省・洞察」の各項目で、SANU 2nd Home会員が非会員に比べ充足側に寄る傾向がみられた(Mann-Whitney U検定を用い、有意水準はp<0.05、p<0.01、p<0.001)。

 一方、自宅では様相が異なる。「深いリラックス」「自然を体感」「自由を実感」「新しい体験・出会い」の各項目では、非会員の方が充足側に寄る傾向がみられた。自宅でSANU 2nd Home会員の方が非会員よりも充足に寄る傾向がみられたのは「仕事や学習に集中」のみだった。

 「内省・洞察」については、宿泊先でSANU 2nd Home会員が充足側に寄る傾向が確認されたが、自宅では有意差なし。「新しい体験・出会い」については、宿泊先では有意差がみられず、自宅では非会員が充足側に寄るという結果となった。

「場」と「価値意識」の両者を視野に

 今回の初期分析から得られた示唆として3社は、「多拠点生活を『場』と『価値意識』の両者を視野に入れて解釈することの重要性が明らかになった」と述べている。

 宿泊先が、回復的要素(リラックス・自然体感)に加え、「集中」や「洞察・内省」といった認知的側面でも充足がみられた点については、「都市生活から距離を置くことが、注意の切り替えや自己調整を伴う状態変化に関与している可能性がうかがえる」としている。

 同時に、「同様の項目が自宅で充足されると認識する層の存在も確認された」とも指摘している。

 ウェルビーイングに対する期待水準の高い都市住民にとって、回復的な側面(リラックス・自然体感)に加え、認知的切り替えの場としての側面(集中・内省)の充足を促進させ、心身状態の調整、ウェルビーイング向上に寄与する可能性が示唆された。

今後は生体指標・行動・環境要因も組み合わせ

 本研究は複数フェーズで構成されている。今後は、生体指標・行動・環境要因を組み合わせることで、多拠点生活が心身に及ぼす影響の構造的理解をさらに深化させる方針だ。

 「どのような条件・頻度・場所の組み合わせがウェルビーイングを高めるか」という実践的な問いへの答えをデータから導き出すことを目指しており、2026年5月には学会でも発表が予定されている。

 得られる知見の応用先として、3社はそれぞれ以下の領域を見据えている。

  • 日鉄興和不動産:ウェルビーイングに資する住環境・拠点設計の指針、多拠点事業の推進

  • SANU:「自然と共に生きる」ライフスタイルの意義を科学的に示すエビデンス構築、および滞在体験のパーソナライズ

  • JDSC:行動ログ・生体データを活用した居住体験プラットフォームの高度化、および不動産・住環境領域における企業・自治体との協業展開

 
 
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