【観光トレンド20】犬と旅する時代② 共生観光への提案 八城薫


 犬同伴の観光需要の拡大は、いわゆるペットツーリズムの広がりとして理解されてきた。宿泊施設や飲食店における受け入れ体制の整備、ドッグランや関連サービスの充実は、その代表的な例である。しかしながら、こうした動きは主として「受け入れるか否か」という供給側の対応に焦点が当てられてきたにすぎない。

 前稿「犬と旅する時代(1)」で述べたように、犬は単なるペットではなくコンパニオンアニマルとして位置づけられ、観光行動の前提そのものに影響を与える存在となっている。そうであるならば、観光のあり方もまた再検討される必要がある。すなわち、「犬同伴が可能であるか」という条件を満たすだけでは不十分であり、「犬にとっても適切な環境であるか」という視点が不可欠となる。

 この点で重要となるのが、動物福祉の観点である。人間にとって快適な観光体験であっても、動物にとって同様であるとは限らない。例えば、夏季の高温環境における散策や長時間の移動は、犬にとって大きな身体的負担となる。また、不慣れな空間や騒音の多い環境は行動の不安定さを引き起こす要因ともなりうる。愛犬ファーストで考えるならば、日陰や休憩スペースの確保、水分補給のしやすさ、移動距離の調整といった配慮は、単なる付加価値ではなく基本的な環境条件として位置づけられるべきである。こうした点を踏まえずに同伴を拡大すれば、かえって問題を生む可能性もある。

 したがって今後求められるのは、「ペットツーリズム」という枠組みを超え、人と動物が共に快適に過ごすことを前提とした「共生観光」への転換である。そこでは、空間設計や動線、休憩環境などを含めた体験全体の設計が問われることになる。観光は本来、関係性の中で価値を生み出す営みである。その対象を人間のみに限定せず、人と動物の関係を含めて再構築していくことが、これからの観光の質を左右するのである。

 (大妻女子大学人間共生学部心理学科教授 八城薫)

 
 
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