「高度なローカライゼーション、実施は34%のみ」――アゴダが訪日アジア旅行者獲得戦略レポートを発表


 アゴダは4月14日、日本の宿泊施設を対象とした調査レポート「勝ちに行く戦略:ローカライゼーションを極めてアジアの訪日旅行者を獲得する」を発表した。基本的なローカライゼーションを超えた取り組みを実施している施設はわずか34%にとどまる一方、統合的なローカライゼーションを行っているすべての施設でポジティブな成果が確認されており、取り組みの深化が収益最大化につながることが示された。

訪日客の80%以上がアジアから

 日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外国人旅行者数は4,270万人に達し、前年比16%増加した。そのうち80%以上をアジアからの旅行者が占めており、上位5送客市場(韓国、中国、台湾、香港、タイ)だけで訪日客全体の約70%を占める。

 2024年の国別訪日外国人旅行者数は、韓国が881万7,765人、中国が698万1,342人、台湾が604万4,316人、香港が268万3,391人、タイが114万8,848人だった。

 レポートはこの市場集中に着目し、「幅広い国際化ではなく、特定の市場に焦点を当てた取り組み」こそが宿泊施設に求められると指摘。この5市場に的を絞ったローカライゼーションを実施する施設は、ニッチ市場を追うのではなく、訪日観光客の大部分を占める市場にサービスを提供していることになると強調した。

ローカライゼーションの成熟度に大きなばらつき

初期段階で71%、高度段階ではすべての施設が収益改善を報告

 調査対象43軒の日本の宿泊施設のうち、ローカライゼーションを「未実施」とした施設は13%。「限定的なカスタマイズ」段階が53%、「意味のあるエンゲージメント」段階が25%、最も高度な「統合的なカスタマイズ」段階は9%にとどまった。

 「意味のあるエンゲージメント」および「統合的なカスタマイズ」の高度段階にある施設はすべて、売上へのプラスの影響と予約数の増加を報告。一方、初期段階の「限定的なカスタマイズ」にある施設でも71%が同様の効果を確認しており、基礎的な取り組みでも成果が生まれることが示された。

 アジア12市場全体の平均と比較すると、「限定的なカスタマイズ」段階のアジア平均は31%であるのに対し、日本は53%と高く、逆に「統合的なカスタマイズ」段階はアジア平均の35%に対し、日本はわずか9%にとどまっており、深化が遅れている実態が浮かび上がった。

 また、調査対象の宿泊施設全体の約80%が、市場別戦略を導入することで予約数が増加し、売上にプラスの影響があったと報告している。

4つの主な障壁

 レポートはローカライゼーションの深化を阻む主な課題として4点を挙げた。

  • 決済システム連携の制約(現地通貨・デジタルウォレット未対応):51%

  • 予算の制約により市場別マーケティング施策が実施できない:51%

  • 異文化の慣習や期待に関する認識の不足:49%

  • 英語以外の外国語に対応できるスタッフの不足:49%

 日本の決済システムはこれまで主に現金とクレジットカードを優先し、QR決済プラットフォームへの対応が後回しにされてきた。また英語中心の教育により、中国語・韓国語・タイ語への対応力が不足していると分析されている。

 現状ではマーケティングについて、日本の宿泊施設の63%がFacebookやInstagramなどの一般的なチャネルのみに依存。決済面では65%がアジアからの旅行者の予約ハードルを下げるデジタルウォレットや現地通貨決済を導入していない。現地での体験についても、66%が中国語や韓国語の客室ガイドや朝食メニューといった文化に合わせたサービスを提供できていない。

OTAとの提携が課題解決の鍵

 レポートは、これらの課題を克服する手段としてOTA(オンライン旅行代理店)との戦略的提携を重視。OTAとの提携により、決済連携・多言語対応ツール・異文化知識という4つの課題のうち3つを解消できるとする。

 高度なローカライゼーション段階にある日本の宿泊施設がOTAを活用する比率は高く、多言語でのエンゲージメントおよびデジタル決済方法については55%、異文化の慣習や期待については51%の施設が活用していると回答した。一方、ゲストデータに基づくインサイトの活用は31%にとどまっており、データ活用の余地が残されている。

 また、日本の宿泊施設のほぼ4分の1(23%)はパートナーシップ機能をまったく活用しておらず、OTAのプロモーション機能を活用している施設はわずか30%にとどまる。予約パターンを市場別に分析してコンバージョン要因を特定している施設も40%にとどまっている。

5市場それぞれのプロファイル

 レポートには付録として、5つの主要送客市場の旅行者動向をまとめた「送客市場別戦略ガイド」が掲載されている。各市場の特徴は以下の通りだ。

 韓国:旅行の動機は1位がリラクゼーション、2位が文化的探求、3位がグルメ体験。平均滞在期間は4〜7日間で、旅行形態は家族連れ(50%)または配偶者・パートナーとの旅行(27%)が中心。宿泊費は約半数(46%)が1泊51〜100米ドルと回答し、費用対効果を重視する傾向がある。62%が次回の旅行計画にAIを活用すると回答。2025年の日本旅行検索数は前年比7%増で、東京・福岡・大阪の3都市に検索の60%が集中している。

 中国:旅行の動機は1位がグルメ体験、2位が文化的探求、3位がリラクゼーション。医療観光への関心も高い。家族連れ(53%)または配偶者との旅行(32%)が中心。過半数(56%)が年間7,000米ドル以上の支出を予定しているが、その多くは宿泊よりもユニークなアクティビティ(44%)やグルメ体験(41%)に充てられる。日本は中国人旅行者に最も人気の海外旅行先で、検索数は3,730万件と2位の目的地の2倍以上。なんと82%が旅行計画にAIを活用するとし、世界で最もデジタル利用が進んでいる旅行者層とされる。

 台湾:旅行の動機は1位がリラクゼーション、2位がグルメ体験、3位がウェルネス・健康。アジアの旅行者の中でグルメ体験やウェルネスを目的に旅をする傾向が特に高い。平均滞在期間は4〜7日間で、家族連れ(58%)または配偶者・パートナーとの旅行(24%)が中心。宿泊費は44%が1泊51〜100米ドルを想定。4人に3人以上(77%)が次回の旅行計画にAIを活用すると回答している。

 香港:旅行の動機は1位がリラクゼーション、2位がグルメ体験、3位が文化的体験。48%が半年以内に3回以上旅行しており、リピーター率が非常に高い。65%は多世代家族連れで、カップル旅行は45%。1回の平均支出額は1,500米ドルで、高級宿泊施設(36.6%)、ショッピング(25.5%)、飲食(22.9%)に配分される。96%がAI活用に意欲的で、63%はすでに旅行の意思決定にAIを活用している。コスト意識も高まっており、52%が物価上昇に応じて旅行計画を調整している。

 タイ:旅行の動機は1位がリラクゼーション、2位がウェルネス・健康、3位がグルメ体験。平均旅行期間は1〜3日間と短く、半数が家族旅行。宿泊費は44%が1泊50米ドル以下と最も予算重視の傾向がある。タイ人の日本旅行検索数は他の目的地の4.5倍で、69%が旅行計画にAIを活用すると回答している。

アゴダのローカライゼーション支援

 アゴダは宿泊施設のローカライゼーション推進に向け、世界600万件以上の宿泊施設ネットワークを活用したサービスを展開している。39言語対応・多通貨決済・24時間365日のカスタマーサポートに加え、以下のプログラムを提供している。

 主要市場での旅行需要のピーク期に宿泊施設の露出度を高める「Agoda Growth Program(AGP)」、特定の旅行者セグメントに向けた早期割引・季節限定パッケージ・長期割引などの市場別プロモーション、そしてアゴダプラットフォーム上で対象市場の母国語による広告キャンペーンを行える「Agoda Media Solutions」。

 アゴダのシニア カントリーディレクター(日本)の猪飼匡氏は次のようにコメントしている。「現時点で高度なローカライゼーションを実現しているホテルは34%にとどまっており、顧客体験全体にわたってその取り組みを加速させることに、大きな成長機会があると考えています。決済、言語、文化理解のギャップを埋めることで、アジアからの旅行者との接点を強化し、持続的な競争優位につなげることができます。アゴダは、パートナーの皆さまがこうした取り組みをより効果的に進められるよう、データやテクノロジー、各市場に関するインサイトを通じて支援してまいります」

調査概要

 本レポートはアジア12市場(タイ、インド、シンガポール、インドネシア、日本、ベトナム、韓国、台湾、香港、中国、マレーシア、フィリピン)の宿泊事業者526社を対象とした調査結果をもとに、日本市場にフォーカスして分析。日本については43軒の宿泊施設を対象としたAccess Partnershipによる調査(2025年)データが使用されている。Agoda「Travel Outlook Report 2026」のデータも活用し、各市場の旅行者プロファイルと実践的インサイトをまとめた「Origin Playbooks」も掲載されている。

 
 
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