国土交通省は3月31日、「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し(令和7年度末時点)」を公表した。
令和7年の取扱貨物量が速報値で被災前を上回る水準まで回復した港湾、必要戸数3,058戸全ての用地確保にめどが立った災害公営住宅、1,000人を超える関係人口を創出した二地域居住の取り組みなど、幅広い分野で進捗が報告された。以下、分野ごとに詳報する。
復興まちづくり――輪島朝市周辺、令和8年春から夏に住宅・店舗再建へ
輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町、中能登町の7市町において、令和7年3月までに復興まちづくり計画を策定・公表。
7市町のうち5市町11地区で地区別の整備計画を策定し、道路や交流施設等の復興まちづくり事業を推進している。
特に輪島朝市周辺エリアでは、地元住民の合意形成のもと、令和8年春頃から夏頃にかけて順次、住宅や店舗の再建を可能とすることを目指し、土地区画整理事業等(約4.8ヘクタール)を実施中だ。
住まいの再建――災害公営住宅3,058戸、最速で令和8年夏に入居開始
応急仮設住宅(建設型)については、令和6年9月の豪雨で被災した218戸の修理も含む必要戸数6,882戸が12月26日までに完成。豪雨で新たに必要となった286戸も令和7年3月28日までに完成した。
恒久的な住まいの再建では、石川県・富山県の10市町で災害公営住宅を整備予定。必要戸数3,058戸全ての用地確保にめどが立った。
内訳は輪島市975戸、珠洲市720戸、能登町260戸、穴水町232戸、七尾市388戸、志賀町184戸、中能登町20戸、羽咋市70戸、内灘町140戸、氷見市(富山県)69戸の計112地区以上。
珠洲市・能登町・穴水町・七尾市・中能登町・羽咋市・氷見市では計約240戸程度の建設工事に着手済みで、最も入居が早い地区では令和8年夏頃に入居予定だ。
また、UR都市機構が輪島市(令和7年4月)、珠洲市(令和7年6月)と災害公営住宅の整備に係る基本協定を締結し、発注方法の実務調整に着手している。
自力再建を目指す被災者向けには、「いしかわ型復興住宅」モデルプラン集(30グループによる55プランを掲載)を令和7年3月に公表・配布。住宅金融支援機構(JHF)の「災害復興住宅融資」は令和8年2月末時点で344件を受理(うちリバースモーゲージ型97件)、融資金利は1.40%(全期間固定、高齢者向け返済特例は2.18%)となっている。相談窓口「いしかわ住宅相談・住情報ネットワーク」の累計相談件数は8,332件(令和8年2月末時点)。
上下水道――本復旧は令和10年度末完了目指す
地震による断水は令和6年5月に復旧。令和6年9月豪雨で新たに5,216戸が断水したが、同年12月20日に全て復旧した(汚水処理機能は確保済み)。
水道施設の本復旧は令和10年度末までの完了を目指す。珠洲市では下水道区域から浄化槽区域への転換を決定し、浄化槽設置工事を順次実施中。
新技術の活用として、衛星技術・デジタル技術を用いた漏水調査のほか、珠洲市善野地区を実証フィールドとした小規模分散型水循環システムの技術実証を実施。令和8年度予算案では、水道事業者が分散型システムを導入する際の施設整備を財政支援する制度を盛り込んでいる。
道路――県道以上の通行止め、令和8年3月末時点で8箇所まで減少
地震により87箇所、令和6年9月豪雨により48箇所の通行止めが発生したが、令和8年3月25日(年度末)時点では計8箇所(地震6、豪雨2)まで減少した。
能登への幹線・能越自動車道等は令和7年内に震災前と同程度の走行性を確保(急カーブ・段差の解消)。本復旧は、のと三井IC〜のと里山空港IC・徳田大津IC〜(仮称)病院西ICについて令和9年春までの完了を予定。残る区間は大規模崩壊箇所の崩土撤去及び大型構造物の施工等が順調に進んだ場合、令和11年春までの完了を予定する。
国道249号沿岸部(権限代行区間約53km)については、令和7年4月25日に大川浜工区で一般交通の1車線通行を確保、同年7月17日に中屋トンネル工区で一般交通の2車線通行を確保、同年12月19日に大谷トンネル工区で緊急車両等の冬期1車線通行を確保、同年12月23日に逢坂トンネル工区で一般車両の1車線通行を確保した。全区間の本復旧は用地取得や大型構造物の施工等が順調に進んだ場合、令和11年春までの完了を予定している。
令和7年3月27日には「能登の持続的な発展を支え、地方創生の礎となる道路ネットワークを構築するための基本方針」を取りまとめた。また、令和7年12月8日には「能登半島絶景海道の創造的復興に向けた基本方針」を策定。滞在型観光の促進、道の駅の集客強化、サイクルツーリズムの活性化、魅力ある風景街道の創出などにより、国内外から人が集まる絶景海道の復興を目指す。
河川・土砂災害――令和7年11月から全河川で本格復旧工事着手
令和6年能登半島地震により河原田川等で大規模な河道閉塞が発生。令和6年9月豪雨では塚田川、珠洲大谷川等で河道埋塞・土砂洪水氾濫等の甚大な被害が生じた。
暫定的な安全性を確保するための対策は令和7年6月までに完了。令和7年8月6日からの大雨に対しては、河岸侵食や土砂流出を軽減し家屋浸水の防止等に寄与した。
本格的な復旧工事は令和7年11月から全河川で着手。令和10年度末までに被災護岸等の本復旧・改良工事の完了を目指す。砂防については令和11年度末までに全箇所での完了を目指す。
県管理河川では非出水期となる11月から、優先度の高い22河川の本格的な復旧工事に順次着手し、令和8年1月までに全河川着手済みとなった。
海岸堤防――宝立正院海岸、令和9年度中の完成目指す
甚大な津波被害があった宝立正院海岸(珠洲市、延長約6.9km)では権限代行により応急復旧を令和6年4月までに完了。地元調整が整った地区から本復旧に着手し、令和7年9月に全地区で着手済みとなった。背後の復興まちづくりと調整を図りつつ、令和9年度中の完成を目指す。
港湾――令和7年取扱貨物量、被災前を上回る水準に回復
5港(七尾港、輪島港、伏木富山港、金沢港、直江津港)での国有港湾施設の災害復旧事業と、8港(七尾港、輪島港、伏木富山港、飯田港、穴水港、宇出津港、小木港、和倉港)での代行復旧を実施中。
令和7年度末時点で被災した主要係留施設延長の6割強が利用可能となり、令和8年度末に主要係留施設全ての本格復旧完了を目指す。
地盤隆起の影響が大きい輪島港では、令和6年7月にもずく漁、同年9月に刺し網漁、同年11月にズワイカニ漁が再開。令和7年5月から定置網漁が再開し、同年7月末には舳倉島への定期船「希海(のぞみ)」も運航を再開した。
和倉温泉・和倉港――20軒中9軒が令和8年3月末までに営業再開
和倉温泉では旅館建物と海沿いの護岸が大きく被災。令和6年12月20日に護岸本復旧の現地着手、令和7年3月19日から仮設道路の整備(石材の投入)を、同年9月26日から新設護岸の設置を開始した。令和7年12月には約100mが概成。
被災した旅館20軒のうち令和8年3月末までに9軒が営業を再開した。各旅館の再開時期は、花ごよみが令和6年5月3日、宝仙閣が同年7月1日、湯の華が同年8月5日、のと楽が同年11月1日、TAOYA和倉が令和7年4月12日、はまづるが同年8月9日、能州いろはが同年10月1日、美湾荘が同年11月11日(一部客室のみ)、海望が同年12月1日(一部客室のみ)。
令和8年度中の可能な限り早期の工事完了を目指す。今後は能登地域を対象とした「復興応援割」を検討している。
観光――北陸応援割を令和6年3月〜11月に実施
「北陸応援割」(補助率50%、最大2万円/泊)を令和6年3月から11月にかけて実施。令和7年度は地域の自然・食・伝統工芸体験などを活かした観光コンテンツ造成への支援を実施した。今後の復興状況・地元意見を踏まえ、能登を対象とした復興応援割の実施を検討する。
「能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」は令和8年度の予算案にも盛り込まれ、引き続き支援を継続する。
空港・交通――羽田=能登路線は1日2往復を維持
能登空港は令和6年1月27日に民間航空機の運航を再開。同年12月25日から地震前と同じ1日2往復の運航を開始した。エプロン(航空機駐機場)の本復旧は令和7年8月に完了。
JR七尾線は令和6年2月に運転再開(震災前と同ダイヤ)、のと鉄道は同年4月に全線運転再開し震災前ダイヤへ回復した。
金沢・能登間の特急バスは令和6年9月7日から能登空港をハブとする実証運行を開始。令和7年度末時点で輪島市へ6往復/日、珠洲市へ4往復/日、能登町へ3往復/日を運行中。令和7年4月に北陸信越運輸局が「能登方面特急バス利便増進実施計画」として認定した。
奥能登地域では市町のコミュニティバスやデマンド交通の実証運行を国が支援。令和8年秋頃をめどに各市町共通のAIオンデマンド交通の実証運行開始を予定する。
のと鉄道については令和7年6月24日に北陸信越運輸局が「のと鉄道七尾線の鉄道事業再構築実施計画」を認定。今後、電気式気動車の導入や観光列車「のと里山里海号」の運行再開等を実施する。
液状化災害――土地境界再確定、最短で令和8年度中の完了目指す
傾斜住宅の修復支援は令和6年7月から開始。令和8年2月1日時点で石川・富山・新潟3県で計2,374件の支援申請を受理した。
内灘町・かほく市を含む8市(金沢市、羽咋市、高岡市、氷見市、射水市、新潟市)において液状化対策を盛り込んだ復興計画を策定済み。早いところでは令和7年12月に対策工事に着手した。
「土地境界再確定加速化プラン」は令和7年9月策定後、令和8年1月に改訂。土地所有者の協力が得られ境界確認等がスムーズに進んだ地域では、最短で令和8年度中に境界確定に向けた調査の完了を目指す。
二地域居住――「いしかわのWa!」で1,000人超の関係人口を創出
石川県が令和7年3月28日に二地域居住に関する広域的地域活性化基盤整備計画を策定。ポータルサイト「いしかわのWa!」を令和7年11月1日にリリースした。
モデルプログラムの造成支援や人材育成を行った結果、約100件のプログラムが造成・掲載され、3月末時点で1,000人を超える関係人口(登録者)を創出した。
国が支援する石川県内の採択プロジェクトは3件で、①県全体の関係人口・二地域居住登録システムの整備と地域仲介役育成支援、②珠洲市での滞在拠点デザインコンテスト(133作品の応募)、③中能登町での被災小規模自治体における二地域居住による復興支援。
国土交通省は「引き続き、現場力を最大限に発揮し、総力を挙げて被災地の一日も早い復旧・復興に全力で取り組む」としている。




