河津川にかかった橋の先にたたずむ福田家
短編小説「伊豆の踊子」の発表から2026年1月でちょうど100年になる。著者はノーベル文学賞作家、川端康成。19歳の時に出掛けた伊豆への一人旅が小説のモチーフになっており、そのときに宿泊したのが福田家とされる。福田家は、小説、映画を問わず「伊豆の踊子」を愛する人々に長年親しまれてきた。
女将の稲穂照子さんは振り返る。「当館の隣には川端先生の文学碑があります。昭和40年11月の除幕式の時、私は大学生でしたが、東京から帰省し、川端先生に花束を贈呈する役を務めさせていただきました。除幕式には、映画『伊豆の踊子』でヒロインを演じた田中絹代さんや吉永小百合さんも出席されていました」。
川端はたびたび福田家を訪れており、「福田家」の揮毫(きごう)をはじめ数々の書や原稿を残した。宿泊客が「伊豆の踊子」の世界にひたれるよう、館内には川端の書などのほか、映画化の際に使用された台本、出演した俳優たちのサインなどを展示している。
福田家の創業は明治12年。現在の客室数は6室。「伊豆の踊子」の舞台となった部屋、川端、太宰治らの文豪が逗留(とうりゅう)した部屋、美空ひばりさんや山口百恵さんが映画撮影で使用した部屋があり、実際に宿泊できる。
温泉宿としての評判も高い。「日本秘湯を守る会」に加盟しており、小説「伊豆の踊子」の中で「私」が入浴した創業以来の「榧(かや)風呂」(伊豆の踊子風呂)、石を配置した露天風呂がある。源泉掛け流しで泉質はカルシウム・ナトリウム―硫酸塩温泉。
「時代が移り変わり、『伊豆の踊子』の宿としてお越しになる方より、秘湯の宿としてお泊まりになる方のほうが多くなりました。小説の発表から100年ということですが、当館が大切にしてきた文学的、文化的な遺産をどう次の世代に受け継いでいくか、どのように宿の新しい魅力を発信していくかが課題です」(稲穂さん)。
【2人1室時1人当たり=1泊2食付き2万3650円から】

河津川にかかった橋の先にたたずむ福田家




