Trip.com、テクノロジーで旅行の心理的ハードル軽減へ


「AI活用で海外旅行をより身近に」鳥海高太朗氏とのトークセッションで明かす

 Trip.comは9月26日、愛知県国際展示場で開催された「ツーリズムEXPO ジャパン 2025」において、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏を招き、最新の旅行トレンドと地域観光の未来についてのトークセッションを実施した。

 9月25日から28日までの4日間開催された同イベントで、Trip.comは「旅は”知”の再発見」というテーマに合わせ、実物大トゥクトゥクや韓国の伝統衣装・提灯のフォトスポットなどを設けた体験型ブースを展開。多くの来場者を集めた。

 トークセッションでは、Trip.com International Travel Japan代表取締役の高田智之氏と鳥海氏が、2025年上半期の旅行動向や秋冬のトレンド、オーバーツーリズム問題、そして旅とテクノロジーの未来について意見を交わした。

2025年上半期の旅行傾向は地方への関心上昇

 高田氏によると、国内旅行では大都市だけでなく北海道や九州などの地方への注目度が上昇しており、「自然体験やアウトドア、隠れた名所など、新しい場所への関心が高まっています」と分析。また、「ユニークな体験型宿泊や高級施設への支出が増加しており、持続可能な観光やウェルネス志向が拡大しています」と述べた。

 海外旅行については、鳥海氏が「日本のユーザーは引き続きアジア近郊が人気です。今年9-10月のフライト予約数は1位ソウル、2位台北、3位バンコク、4位釜山、5位香港と、韓国が1位と4位を占めており、人気なエリアです」と指摘。アウトバウンドの動向についても「今年の夏は株価が上がった影響もあり、ヨーロッパやハワイに行く人も多い印象でした」と語った。

 一方で、依然として円安が海外旅行のハードルになっているとの見方も示された。「円安の状況に慣れてしまった部分はありますが、まだまだ大変な状況です。旅行が贅沢品になってしまう部分もあると思います」と鳥海氏は言及。「私自身も旅行時のソフトドリンクはスーツケースに入れています」と具体例を挙げた。

海外旅行の課題はパスポート所持率と言語の壁

 日本人の海外旅行についての課題として、高田氏は「日本では依然としてパスポートの所持率が低く、まずはそこからかなと思います」と指摘。Trip.comのユーザーリサーチでは「海外旅行に行きたい気持ちはあるが、言葉の壁や車の手配をどうするのか、ということが旅行のハードルになっている」ことが明らかになっているという。

 これに対してTrip.comでは「無料の翻訳や無料ラウンジの使用などを提供しています。また、ワンストップアプリなので航空券、ホテル、空港送迎、アトラクションの予約まで全てアプリで完結できます」と高田氏。「現地で困ったことがあれば24時間カスタマーサポートもあります。旅行中に万が一、問題があっても助けてもらえるよね、という安心感が海外に行こうと思っている人の後押しになれば」と語った。

AIで変わる旅行体験

 テクノロジーと旅行の関係について、Trip.comはAI機能の強化に取り組んでいると高田氏は説明。「Trip.comのAIに関して、一つはBtoBの事業者向けのAI開発と、もう一つはBtoCの消費者向けのAI開発があります」と述べた。

 具体的な機能として「Trip.BEST」というAIが作成する独自の旅行ランキングデータを紹介。「1億件以上のユーザーレビューやその他のデータを分析し、ホテル・レストラン・アクティビティをはじめとする高品質な施設や体験をランキングにしています」と説明した。

 さらに「TripGenie」と呼ばれるAI機能も提供。「簡単にいうとチャットボットですが、同時翻訳ができます。メニューをスキャンすると、料理名の翻訳だけでなくその料理の特徴まで教えてくれます。また、観光スポットで、カメラをランドマークに向けると、それが何なのか説明をしてくれます」と高田氏は機能を紹介した。

 こうした技術について「全てアプリ内で無料で使えますし、そういった機能があることで、少しでも海外旅行の心理的ハードルが下がると嬉しい」と述べた。

オーバーツーリズムと二次交通問題

 近年顕在化しているオーバーツーリズムについて、鳥海氏は「簡単に言うと、観光客の増加により、現地の人が日常生活に支障をきたすことですよね」と説明。「昔は観光客と地元住民との共存だったのが、今では地元住民、日本人観光客、外国人観光客と3つの軸になっています」と現状を分析した。

 問題解決策として「予約制だと思います。例えば、京都では早朝特別拝観や、夜間の拝観などを実施しているところもありますが、それを日本人観光客向けに売ることができれば、ストレスフリーになるのではないでしょうか」と提案した。

 また、観光地での二次交通問題についても言及。これに対してTrip.comでは「空港送迎サービスを世界中で展開しています」と高田氏。「空港に到着したらお客様の名前を持ったスタッフが待っていて、ホテルや目的地まで乗せていってくれます」と具体的なサービスを紹介した。

地方観光の活性化へ

 お二人の共通点でもある徳島県の観光について、高田氏は「2025年1-8月の宿泊の伸び率が徳島県は全国一位でした」と報告。その背景として「国際便が初めて就いたということもあります」と説明した。

 地方観光の課題としては「観光客の全員がレンタカーを運転できるわけではないので、地方ではなく東京や大阪などの都市部に集中してしまうこともあるのですが、二次交通問題を解決できれば、オーバーツーリズムについても分散できるのではないか」と高田氏は述べた。

 鳥海氏も「地方はまだまだ隠された魅力があります。課題となるのが二次交通だと思います。現金しか使えないタクシーも未だにあったりするので、そこを解決していくことが重要だと思います」と同様の見解を示した。

今後の旅行業界に期待すること

 最後に今後の展望について、鳥海氏は「ITの活用によって旅の可能性は広がります。SNSも旅行に行くきっかけになりますし、旅はリアルでないと成立しません」と語った。そのうえで「若いうちから、旅に行くことや、旅に興味をもってもらう若者を増やしていきたい」と期待を述べた。

 高田氏は「これまでの海外OTAはどれだけスムーズに予約できるかが重要でしたが、AIの発達で、よりパーソナライズされ、責任とカスタマーサポートが重要になりました」と業界の変化を指摘。「テクノロジーをつかったサポートはユーザーに安心を与えます」と述べた。

 さらに「第三次産業やインバウンドの力で二次交通を使って、海外旅行者が地方に行けるような、少しでも地方の応援ができるような企業になりたいですし、そういったところを今後も強化していきたい」と今後の展望を語った。

 
 
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