
森口常務
JTB旅ホ連の総会に際して、JTBの各事業・領域、グループ会社などのトップに2024年度の取り組みの成果、25年度の事業の方向性、旅ホ連との連携などについて聞いた。
DX、エリア開発、深化、拡張 旅ホ連会員、自治体と連携
――24年度の取り組みは。
「エリアソリューション事業における中期経営計画フェーズ2のテーマを『開発と成長』と定め、24年度の重点テーマを『進化と拡大』として、グループ内外との共創による事業展開を加速し、観光地を面で活性化するビジネスの伸展に取り組んだ」
――三つの領域のうち「観光DX領域」の成果は。
「旅ナカコンテンツの流通が拡大した1年だった。事業者向けのソリューション分野では、観光施設向けの『GFJチケットプラットフォーム』の販売流通額が前年比120%となり、過去最高を更新した。アクティビティ事業者向けのデジタルプラットフォーム『JTB BOKUN』の販売流通額もインバウンド需要の拡大に伴い、前年度比342%となった」
「自治体やDMO向けの分野では、地域共創基盤をはじめとしたデータ基盤の導入数が前年度並みを維持したほか、デジタルマーケティングなどの教育プログラムを提供する『観光DX人材育成プログラム』を開始し、九州を中心に全国で計23回のプログラムを実施した」
――「観光地整備・運営支援領域」の取り組みは。
「ふるさと納税では、個人版ふるさと納税の契約自治体における寄付額の最大化に取り組んだ結果、年間寄付額は過去最高を更新し、前年度比113%となった」
「『JTB商事』の関連では、インバウンドの増加などで宿泊施設の客室稼働率が上昇したことで、消耗品販売などの取り扱いを伸ばした。また、リブランドを含む複数の新規開業ホテルの案件を獲得し、装備品販売も前年度を超える実績となった」
「『JTBビジネスイノベーターズ』においては、宿泊事業者向けのオンライン決済ソリューション、対面クレジットカード決済ソリューションによる決済額が過去最高となった。新たな取り組みでは、産業廃棄物の処理を適正化、透明化するソリューション『WaReSS』を開発し特許を取得した。JTBグループが有する金融・決済のノウハウを活用し、産業廃棄物処理の費用を透明化することで、サステナビリティ、業務効率化に貢献でき、宿泊施設への導入も始まっている」
――「エリア開発領域」は。
「地域を面で活性化するという観点では、小豆島(香川県)にスポットを当てて取り組んだ。地元の自治体やDMO、さまざまな民間企業と連携して『20年先の小豆島をつくるプロジェクト』を発足するとともに、シェアサイクル事業を開始したほか、バスや船の自動運転、ドローンの空撮サービスなどの実証実験を実施した。今後も取り組みを拡大する。また、大型テーマパーク『ジャングリア沖縄』の開業を控える沖縄北部エリアでは、2次交通の開発などを関係者と連携して継続的に進めた。他のエリアについても、地元の関係者や協業パートナーとの関係性を強化し、開発候補案件の拡充に注力した」
「大阪・関西万博では、法人からの受託業務として、入場の仕組みを提供したり、一部パビリオンの運営を受託したりしている。旅行商品では、万博とユニバーサル・スタジオ・ジャパンをセットにした個人向け商品の販売も開始した。また、協賛事業として万博公式サイト内の観光ポータルサイトを運営しており、万博を訪れる国内外のお客さまに全国各地の旅ナカ体験を提案している。現時点で500件以上の着地型コンテンツを掲載しており、全国各地への周遊を促進している」
――25年度の取り組みは。
「25年度の重点テーマは『深化と拡張』。各事業の領域拡大や新たなソリューション・サービスの創出、事業間連携の加速によって事業の厚みと幅を広げることで、25年度から始まる中期経営計画第3フェーズにおける飛躍の1年としたい」
「『観光DX領域』ではソリューション・サービスの開発と面的拡大により、旅行者の体験価値の向上に寄与したい。デジタルメディアの活用によって観光施設やアクティビティ事業者のカスタマーサクセスに寄り添うサービスを展開する。また、観光事業者の生産性向上に資するソリューションを強化したい。この領域ではAIの組み込みも鍵になると考えている」
「『観光地整備・運営支援領域』では、各事業における基盤の安定化に向けた競争優位性を追求するとともに、さらなる成長につながる事業開発、領域拡大、戦略的な連携・協業の推進に取り組む」
「『エリア開発領域』では、大阪・関西万博に関するプロジェクトを成功させるとともに、そのレガシーを大阪IR(統合型リゾート)の開業に向けた開発につなげたい。取り組みの一例では、JTBが複数の企業と大阪・道頓堀エリアに開設したエンターテインメント施設で、3月末から『XR―Theater&Variety ACT Show』を開始した。日本の伝統芸能やポップカルチャーをⅤRで楽しむとともに、夜はさまざまな種類のショーが開催されている。さらなる増加が見込まれる訪日外国人を念頭に、地域における滞在や消費の拡大につながるナイトコンテンツに育てていきたい」
――旅ホ連との連携は。
「旅ホ連の皆さまは、各地域における最大のパートナーだ。お客さまに地域を訪れていただくため、DXなどを通じて宿泊事業者の生産性向上、お客さまの満足度向上に貢献していく。地域の顔である旅ホ連の皆さまには、地域を盛り立てるため、地域への橋渡し的な役割をお願いしたい。例えば、旅ホ連の宮﨑(光彦)会長の地元、道後温泉では『デジタル温泉都市構想』のもと、松山市とJTBは地域連携協定を締結させていただいた。旅ホ連、自治体、JTBが一体となってDXやさまざまな開発を進める好事例なので、こうした取り組みを全国各地に広げていきたい」
森口常務