開始まで1年弱 対応迫られるインボイス制度 


IT導入補助金活用し、デジタル・DX化の契機に

 来年10月1日に開始するインボイス制度(適格請求書保存方式)だが、開始まで1年を切った現在も登録社数は低調に推移している。東京商工リサーチ(東京都千代田区)のデータをもとに、同制度の現状や今後の対応などについて解説、展望する。

インボイス制度が鍵に

 インボイス制度は税額控除に関する新制度で、所定の記載要件を満たした請求書を「インボイス(適格請求書)」という。インボイス発行には「適格請求書発行事業者」登録が必須で、所轄税務署から登録された事業者には「登録番号」が付与される。

 同制度開始に伴い、課税事業者は自社売り上げに課税される消費税を納税する際、仕入れ時に既に支払い済みの消費税分の控除を受けるためにインボイスが必要となる。そのため、仕入れ先がインボイスを発行できる事業者であるか否かを事前に把握しておくことが重要となる。仕入れ先がインボイス発行事業者未登録(非インボイス)の場合、仕入れ先へ支払った消費税が仕入れ額控除の適用外となり、消費税を多く納税しなければならなくなる可能性が生じるためだ=表。

 表中のケースでは、インボイス制度実施前(来年9月30日まで)は、販売先からの消費税(10万円)から仕入れ先へ支払った消費税(3万円)を差し引いた7万円が税務署への納税額となる。しかし同制度実施後(同10月1日から)は、仕入れ先が適格請求書発行事業者でない場合、税務署に納付する消費税から仕入れ額が控除されなくなるので、販売先からの消費税(10万円)を控除適用なくそのまま納税することになる。

 

IT導入補助金などを活用しインフラ整備も視野に

 東京商工リサーチが国税庁「適格請求書発行事業者の公表情報」などをもとに独自に分析した調査によると、9月末時点の法人の事業者登録は96万1918件、個人企業の登録は24万1792件で、国税庁が登録を見込む約300万件の半数未満にとどまっている。総務省「平成28年経済センサス」に基づく法人数は187万7488件なので、法人の登録率は約半数に達する一方、同調査での個人企業数は197万9019件なので、個人企業の登録率は約12%となっている。 同時点での都道府県別登録率は東京都が最多で57.6%、次いで山梨県(57.1%)、大阪府(56.2%)、三重県(55.5%)で、最も低かったのは秋田県で43.4%、次いで長崎県(44.9%)、神奈川県(44.9%)となっている。

 観光業界について、宿泊施設は食材や飲料、館内備品販売業者やクリーニング業者など、旅行会社は観光施設や交通・運輸業者、土産店や飲食店など、仕入れ先が多岐多種にわたる業界の一つでもある。自社のインボイス制度登録に加え、仕入れ先が同制度登録業者か否かが業者選定の大きな要因となることも想定される。また、現在補助率が引き上げられている特定ツール(会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトなど)を対象とした補助金(IT導入補助金)を利用するなどして、インボイス発行に係る社内の経理関連インフラの整備も進めておきたい。

 適格請求書発行事業者登録の申請締め切りは来年3月31日。制度開始後の経理実務や、取引先(仕入れ先)が非インボイス事業者である場合の想定を入念に行い、滞りなく同制度に対応したいところだ。

 インボイス対応に関連する「デジタル化基盤導入類型」(IT導入補助金2022)の詳細はhttps://www.it-hojo.jp/、会計等各ソフトのインボイス仕様への対応を含むデジタル化、DX化に関するサポートは「みらデジ」(https://www.miradigi.go.jp/)。

 

 
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