新しい夜の価値を創出 ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事 齋藤貴弘氏に聞く


ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事 齋藤貴弘氏

風営法改正を機に政策化 欧州には「夜の市長」存在

 ――一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA=Japan Nighttime Economy Association)の組織と活動の内容は。

 「国、自治体、民間企業、クリエイターと共に、地域の多様な資源を活用し、文化と経済に資する新しい夜の価値を創出することを活動目的としている。政府や自治体のナイトタイムエコノミー政策立案をサポートし、さまざまな地域で民間実装していくためのプラットフォームを目指している。具体的なミッションとしては、(1)各種ステークホルダーのネットワーク構築(2)ナイトタイムエコノミー活性化に向けた機運醸成(3)規制緩和等のルールメイキング(4)海外先進事例等の専門的知見の共有・リサーチ(5)コンテンツ開発およびプロモーション支援―を掲げている。一般会員として、三井不動産、三菱地所、東急、大成建設といったディベロッパーやゼネコン、サントリーといった飲料メーカーなどにご参加いただいている。私が代表理事で、ATカーニー日本法人会長の梅澤高明氏と立教大学経営学部客員教授の永谷亜矢子氏が理事を務めている」

 「2016年に風営法が改正され、夜間エンターテインメントに関した大きな規制緩和があった。これに合わせて新しい夜間市場の創出が政策となり、政策アドバイザリーボードの座長を拝命した。これが一般社団法人化のきっかけとなった」

 ――コロナ禍中は夜の街の灯が消えてしまっていた。

 「全世界を襲った新型コロナは、それまでのナイトタイムエコノミー活性化の動きを停止させてしまった。しかし、交流を深める場としての夜、創造性に富む文化的表現の場としての夜、経済活動の場としての夜など、夜の価値が失われた訳ではない。私たちはむしろ夜が持つさまざまな価値を再認識したのではないだろうか。世界的な都市間競争下において、多様な夜の過ごし方、ライフスタイルを受け止め、都市の魅力を高めていく『夜の場』づくりが求められている。これまでの日本のナイトタイムエコノミー施策では観光・インバウンドに関して多くの議論がなされてきたが、本来、『人間・文化を中心とした街づくり』『住み、働き、遊ぶ人の多様で豊かな営み』があるからこそ、街は観光客にとっても魅力的な場所になっていくはずだ」

 「インバウンド観光は、コロナ禍前から成長戦略や地方創生の切り札として位置づけられており、その国家戦略は今後も変わらない。日本の各地域に存在する、新旧の多様な文化コンテンツは観光資源として大きなポテンシャルを持っている。世界との交流によって日本文化を磨き、アップデートしていくことも重要だ。体験型観光の拡充に注力する観光庁は、アムステルダム、ベルリン、ニューヨーク、ロンドン等の先進都市と連携しながら『ナイトタイムエコノミー』拡大の取り組みを本格化してきた。大都市だけでなく地方部においても、宿泊を伴う観光目的地に進化する上で重要な役割を担うテーマだ。お祭りや花火、食事やお酒など、地域ごとに固有の夜の体験があり、政府も地域文化を支え成長させていく文化観光支援に力を入れている」

 ――先進都市の参考事例は。

 「アムステルダム市やロンドン市等にはナイトメイヤー(夜の市長)がいる。街でイベントや観光的な動きをする際に、それが昼間だとスムーズに推進できるが、夜間の場合はまず規制する力が働く。夜の価値を世の中に広め、夜に起こりうるリスクをマネジメントする役割をナイトメイヤーが担っている。半官半民の立場で、昼と夜をブリッジする調整官だ。多様性に富む夜の世界とパイプを持つ人が就任し、地域の価値を高めていくためさまざまな取り組みをしている。アムステルダムの女性市長、フェムケ・ハルセマ氏が3月に来日された際にお会いしたのだが、ナイトメイヤーからさまざまなフィードバックを受けた上で政策形成を行っているとおっしゃっていた」

 「ニューヨーク市にはナイトライフ局がある。都市に多様性を持たせるには夜が重要であるという考え方に基づいている。夜は昼とは違って皆が自由になれる。そこには昼間の肩書やラベリング(LGBTQ、移民、ブラックコミュニティ等)を超えた人的交流があり、それがニューヨークらしさを形作っている」

 

 さいとう・たかひろ 弁護士。1976年東京都生まれ。学習院大学法学部卒。ミュージシャンなどを経て2006年に弁護士登録。弁護士として、各種文化やエンターテインメント振興に関する各種法務に加え、法規制対応や政策立案を含むルールメイキング分野にも注力。風営法改正やそれに続くナイトエンターテインメント施策に尽力している。【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

 
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