圏域内の旅行が下支え 近距離、マイクロツーリズム志向に


7~9月期 コロナ禍、費用割引で比率増加

 今夏の日本人の国内旅行は、コロナ禍という異常な環境下で近距離の旅行が増加したようだ。観光庁の旅行・観光消費動向調査の2020年7~9月期の速報値を基に試算すると、宿泊旅行の目的地が旅行者の居住地と同じ地方ブロック圏内である割合は、前年同期に比べて大幅に上昇した。感染リスクなどを踏まえた移動の距離や時間が短い旅行、自治体の宿泊費割引などが活用できる旅行、地元の魅力を見直すマイクロツーリズムなどが宿泊旅行需要を下支えした可能性がある。

 

 日本人の国内旅行は、7~9月期の延べ宿泊旅行者数が前年同期比51.4%減の4620万人だった。宿泊旅行の需要が前年の半分程度となり、例年とは旅行環境が大きく異なるが、居住地と同じ地方ブロック圏内への宿泊旅行の割合は、地方運輸局などの管轄ベースの10地方ブロック圏全てで前年同期、前々年同期を大幅に上回った。

 20年7~9月期における居住地と同じ地方ブロック圏内への宿泊旅行の割合(カッコ内は前年同期比)は、北海道89.4%(14.3ポイント増)▽東北77.8%(27.6ポイント増)▽関東48.1%(18.3ポイント増)▽北陸信越58.7%(22.9ポイント増)▽中部44.3%(19.6ポイント増)▽近畿46.3%(15.0ポイント増)▽中国61.3%(27.0ポイント増)▽四国72.8%(42.7ポイント増)▽九州68.9%(13.1ポイント増)▽沖縄78.2%(44.3ポイント増)。

 新型コロナウイルスの流行では、政府が6月19日に都道府県をまたぐ移動の自粛要請を全国で解除したが、8月ごろには感染が再拡大する地域が見られた。いわゆる3密の回避など感染予防への意識の高まりもあって、近距離、圏域内の宿泊旅行を選択する旅行者が増えたと推測される。

 多くの地方自治体が住民などを対象に地元への宿泊を促進する旅行・宿泊費用の割引事業を実施したことも、近距離、圏域内の宿泊旅行の需要を喚起したとみられる。併せて政府のGoToトラベル事業が7月22日にスタート。東京都発着の旅行は9月末までは対象外となったものの、冷え込んでいた国内旅行市場が活性化した。

 コロナ禍などを踏まえた近距離旅行、圏域内旅行の動向について、観光庁の蒲生篤実長官は11月20日の専門紙向け会見で、「(旅行単価の交通費では)長距離交通機関の購入率が減少していることから推測はできるが、まだ発表できる分析結果はない。ただ、GoToトラベル事業を見ても、7~9月期の行き先は同じブロック圏の中が多かった。ブロック圏をまたぐ移動が少なかったということは、長距離交通機関の購入率が下がったことと連動するのではないか」と説明した。

 
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