【withコロナ時代の旅館経営への提言】どこまで密にできるか 日本大学国際関係学部国際総合政策学科 准教授 矢嶋敏朗氏


矢嶋准教授

 今、「マイクロツーリズム」や、「密」を避ける旅行が叫ばれている。しかし、国内旅行はもともと密だ。旅館も食事・土産店も観光バスも、密の旅行により成り立ってきた。これらのビジネスモデルは密なのだ。

 ウイズコロナの今、旅行をある程度「個」にしなければならないが、密の中で商売をしてきた人たちがいる。その人たちを守らなければならない。旅館も食事・土産店も観光バスも、定員の半分しかお客さんを受け入れられないとしたら、採算が合わずに商売が成り立たなくなる。働く人たちも減らされてしまう。過渡期ならともかく、長く行うのは無理だ。

 個と密の落としどころを探るべきではないか。

 どこまで密にできるかは、もちろん感覚ではなく、科学的根拠に基づいての研究が必要だ。ただ、ある程度は腹をくくらなければならない。現在は、100%安全という時代ではない。感染症に限らず、世の中にはさまざまなリスクが存在する。全てを気にしていては、旅行はおろか、外出もできなくなる。

 密によって生まれるにぎわいや良さがある。それは古来受け継がれてきた日本の文化だと思う。バスを1人のお客さんに貸し切りで提供したり、接客係がフェイスシールドを付けて接待したりしている。ニュース素材としては興味深いが、私にはコントのように見えて違和感を覚える。

 旅行会社で広報を20年担当したが、マスコミの報道には気を付けなければならない。視聴率を考えて、目先の、インパクトがあることを取り上げがちだ。今はマイクロツーリズム。お客さんが引っ張られすぎて、今までの密の旅行が叩かれる勢いだ。

 経営者には信念をもって取り組んでほしい。日本の旅行文化は密の中で育まれてきた。日本には団体の宴会があり、二次会がある。私も宴会文化が大好きだ。絶対なくしたくない。

 人との接触を減らずため、接客係が客室に入らなかったり、機械でチェックイン作業を行ったりする旅館が出てきた。人手不足や生産性向上を考えて、仕方がない面もあるが、旅館ならではの良さをなくしてほしくない。

 お客さんは旅館に非日常を求めている。客室でお茶をいれたり、浴衣のサイズを測ったりと、一見、無駄と思える作業も非日常の中では必要なのだ。無駄な文化だからこそ残してほしい。日本の旅館が全てB&Bのようになってしまったら、特に富裕層から相手にされなくなる。マーケットの大きな損失だ。

 今、経営者の皆さんは、私には計り知れない苦労をされていると思う。多くの方と話をして、大学として産学連携で旅館の未来戦略、皆さんが培ってきた密の文化の継承のお役に立ちたい。


矢嶋准教授

 
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