【駅メロ とわずがたり 28】JR豊後竹田駅 滝廉太郎「花」が桜の開花とともに 藤澤志穂子


 九州で大分と熊本を結ぶJR豊肥本線、中間地点にある豊後竹田駅(大分県竹田市)、桜が満開に近づいた3月28日から、ゆかりの作曲家:滝廉太郎(1879~1903)の代表曲の一つ「花」(作詞:武島羽衣)が駅メロに採用された。2024年は豊後竹田駅の開業100周年で、JRグループの観光キャンペーン「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」(4~6月)の開始にあわせた採用となった。

 豊後竹田駅では、戦後間もない1951(昭和26)年から、やはり廉太郎の代表曲である「荒城の月」(作詞:土井晩翠)が駅メロに採用されており、現在は竹田市少年少女合唱団が歌う音源が列車到着のメロディとなっている。2013(平成25)年からは、竹田に伝わるキリシタン文化を継承する「サンチャゴの鐘」(作詞:横井弘、作曲:船村徹)が発車メロディに使われていたが、こちらを「花」に切り替えた。

 「キャンペーンに当たって、竹田市でも実行委員会を作り、さまざまな検討をした中でメロディを変えることになり、『花』に決まりました。子供のころから親しんだ大先生ですから」と竹田市商工観光課の佐藤禄恵課長。市民の間からは、「『荒城の月』を変えてしまうんですか」と心配する問い合わせもあったという。音源は竹田市の市民コーラスグループ、市民有志らが歌い録音した。

 竹田市は廉太郎が、官僚の父の赴任に伴い移り住み、少年時代を過ごした街だ。その邸宅は記念館として公開されており、多くの市民が夭折した天才作曲家を地域の誇りとしている。年間を通じ廉太郎にちなんだ演奏会やコンクールを行っており、全国の高校生が集う「滝廉太郎記念全日本高等学校声楽コンクール」は70年以上の歴史がある。「廉太郎は今でいう上流階級の『おぼっちゃま』でした。でも運動神経抜群、人柄も良く人気者。音楽の才能は卓越した天才で、みんなの憧れの的だったようです。そんな彼がドイツ・ライプチヒ王立音楽院へ国費留学することが決まった時は、当時の竹田の人に大きな夢と希望を与えたそうです」(竹田キリシタン研究所・資料館の後藤篤美館長)。

 市民や乗降客の反応はすこぶるよく、豊後竹田駅には「到着メロディと発車メロディが滝廉太郎の曲になり統一感があって良い」「ゆかりの街なので大変誇らしい」「市民の歌声も流れることは親しみを感じる」といった声が寄せられている。駅からほど近い場所にある「廉太郎トンネル」=写真=では、通行するたび「花」「荒城の月」などおなじみのメロディが流れる仕掛けで観光名所の一つになっている。

 「春」はもともと、東京の隅田川を歌う唱歌で、墨田区では区民の愛唱歌に指定している。これを機に、双方の交流が生まれてほしい、とも願う。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)など。

 
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