【道標 経営のヒント 156】日本の夏の過ごし方 佐々山建築設計社長 佐々山茂


 この夏の暑さは体温を超えることがあり体にこたえた。岐阜市の病院ではエアコンの壊れた病室で5人の患者が亡くなり刑事事件に発展しそうだ。私の母親の居間のエアコンが故障したが、修理すると時間が掛かるので即日取り換えた。

 埼玉県加須市は冷房のない公立小中学校の当面の措置として35度を超えると臨時休校と発表。日本の夏はエアコンがないと命にかかわる時代になった。夏は赤道直下のようで、冬は北国になり、四季があるとはいっても、近頃は秋や春でエアコンがいらない期間が狭まっている。

 壁厚が10センチの木造文化で断熱に対する意識が低く、断熱材の厚さは日本では50~100ミリが普通だが、ヨーロッパでは120ミリから180ミリが標準になっている。その上、日本人は開放的で大きな窓が好きで、南側には大きな窓が付く。シングルガラスのアルミサッシュでは遮熱はできないので熱気と冷気が入り、冬には結露で苦労することになる。外気負荷を減らすには壁の断熱性を上げ、窓からの熱の入射を防ぎ、隙間風や換気など余分な外気の侵入を防ぐことが必要になる。

 数年前に設計した外断熱の住宅は屋上に太陽熱温水器と太陽光発電を設置し、電気とガスでバックアップするハイブリッドとした。この夏の暑さでクライアントにサーモグラフィで温度測定をお願いしたところ、朝の8時で朝日の当たるタイルの外壁温度が42度あったが、内壁は28度と14度差があり、外断熱が効いていると報告があった。

 ロックウール100ミリで断熱された木造のわが家はヒートブリッジ(熱橋といって断熱材の欠損箇所で熱が入る)も多く、エアコンは27度に設定しても壁の表面温度は35度を超え、輻射(ふくしゃ)熱を感じる。暖房しながら冷房しているようなものだ。

 外出時のエアコン「つけっ放しが節電」のボーダーラインは「35分」と大手エアコンメーカーがネットにうたうが、休日の自宅のエアコンはほぼ1日つけっ放し。宿泊施設でも新鮮な空気、適度な湿度、快適な温度の3条件を維持することは意外と難しい。

 エアコンをつければOKでなく、小さなエネルギーで快適な空気環境が提供できる方法を考えたい。外断熱や二重サッシュにはお金がかかるが、緑陰を作ることや打ち水は自分たちでもできる。西日対策には遮熱カーテン、遮熱フィルムが効果ある。できることから始めたい。

 
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