前回に引き続き、コロナ小康期に業績アップに向けて取り組むべきことを紹介したい。感染者数の抑制が続くと、雇用調整助成金や補助金、融資制度が打ち切られることが想定される。そうなる前に業績の正常化を図りたい。
2、人手不足に先手を打つ
コロナ後の正常化を進めている米国では、観光業や飲食業などの人手不足が深刻化している。コロナ禍で一時帰休や人員削減を行ったが、需要回復により職場への復帰を呼びかけても人手が戻らない状況に陥っている。日本においても同様の問題が発生する可能性が高い。そうなる前に、今のうちから先手を打っておこう。
特に人手不足の深刻化が予想されるのが、サービススタッフ(客室係、フロント、ホール)と清掃係だ。もともと人手不足だった職種であるが、コロナ禍の長期化をきっかけに業界から離れてしまった働き手が多い。すでに他の業界で働いているので、観光業界に戻ってもらうには職場の魅力づくりや待遇改善が欠かせない。
コロナ禍により経営上の優先順位は落ちてしまったが、働き方改革関連法の一環として、中小企業においては2021年4月1日より同一労働同一賃金が施行されている。同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。観光業界においては一層の待遇改善が求められることになるだろう。
経営面から見れば、1人当たり人件費を引き上げると経費がかさみ赤字体質になるリスクがある。そういった事態を避けるためには、サービススタンダードや人員配置、シフトの見直しが欠かせない。
幸いにも、衛生意識の定着によって消費者のサービスに対する考え方は大きく変化した。従来は人手のかかるサービスが評価を得ていたが、今は必ずしも歓迎されなくなっている。本格的に営業再開するにあたって、お客さまの滞在環境の改善や生産性向上のための設備投資を積極的に行うことが望ましい。
(アルファコンサルティング代表取締役)