前回に引き続き、働き方改革法への対応について具体的なポイントを紹介しよう。罰則付きの残業時間の上限規制、年次有給休暇の取得義務、勤務間インターバル制度導入の努力義務、同一労働同一賃金など、旅館・ホテルの運営方法を根本から見直さなければならない制度改正が多い。早いものは来年4月1日より施行されるので、早めに準備しておこう。
(6)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
パート・アルバイトや派遣社員、契約社員などの非正規雇用スタッフに対して、正規雇用スタッフとの待遇の差や内容について説明することが義務化される。旅館・ホテル独自の慣習や考え方というのは通用しない。採用面接時や雇用契約を交わす時、スタッフから問い合わせがあった時に説明できるよう準備しておこう。
非正規雇用スタッフから聞かれる可能性が高いテーマは、昇給制度、交通費などの手当、休暇制度である。昇給については正規雇用スタッフと同様に年1回の改定とするか、時給アップの機会を随時与えるか決める必要がある。人事考課表や賃金テーブルなどを整備するとよい。
通勤手当や家族手当、住宅手当、資格手当、役職手当などを非正規スタッフに支給しない場合には、なぜ待遇差があるのか根拠づけを明確にする必要がある。
人手不足解消のために、正規雇用スタッフのみを対象に公休日の増加、リフレッシュ休暇の導入、有給取得の促進を行うのは、待遇差を拡大させることになる。時代に逆行した施策といえるだろう。非正規雇用スタッフ向けにも正規雇用スタッフ向けに準じた制度を導入することが望ましい。
待遇差について、問題になる事例、問題にならない事例を具体的に知りたい場合には、厚生労働省が2016年12月20日に公表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」を読むとよいだろう。基本給や昇給、各種手当、福利厚生、教育訓練などについて、具体的な事例を紹介しながら問題になるか否か解説している。ご興味のある方は厚生労働省のホームページからダウンロードしてほしい。
(アルファコンサルティング代表取締役)