【観国之光 227】外客呼ぶ国立公園、廃屋施設の整理必用 本社論説委員 内井高弘


廃屋の放置は国立公園のイメージ悪化につながりかねない(環境省の資料から)

 外国人観光客を増やそうとさまざまな施策が講じられているが、その一つに国立公園の活用がある。旗振り役は環境省で、国立公園を訪れる外国人観光客を20年までに1千万人にする「国立公園満喫プロジェクト」を打ち出し、受け入れ環境の整備や海外への魅力発信に力を入れている。

 同省によると、17年には約600万人の外国人が国立公園を訪れている。前年と比べ10%の増加だ。ちなみに、最も利用者数が多かったのは「富士箱根伊豆」で258万人、次いで「阿蘇くじゅう」の92万6千人、「支笏湖」の90万1千人と続く。

 国立公園は全国に34あるが、まず8公園(阿寒湖、十和田八幡平、日光、伊勢志摩、大山隠岐、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、慶良間諸島)が選定され、「ステップアッププログラム2020」基づき、魅力向上につながる取り組みが行われている。

 貴重な資源が保護されている国立公園は、外国人に日本の四季の美しさをアピールできる場所でもある。しかし、廃業したホテルや食堂などの施設が放置され、景観の妨げになっているところも少なくない。

 バブル期に大型ホテルが相次ぎ建設され、その後の景気低迷を受けて休廃業する例が後を絶たないためだ。

 青森、岩手、秋田県にまたがる十和田八幡平国立公園。その中に十和田湖・休屋(やすみや)地区がある。奥入瀬渓流にも近く、新緑や紅葉シーズンには多くの観光客が訪れる景勝地だ。

 しかし、休屋を歩くと玄関や窓に板を打ち付けた食堂やホテルが目に入り、寂れた雰囲気が旅行者の気分を萎えさせる。イメージ悪化に地元も頭を抱える。

 同省は国立公園における宿泊施設のあり方について、検討会を設け議論を進め、先ごろその検討結果を公表した。

 廃屋については「旅行者に衰退した観光地の印象を与え、地域の魅力や活力を失わせる。特に、自然の風景そのものが価値である国立公園においては、廃屋によりその価値が損なわれることは深刻な問題」と指摘する。

 十和田八幡平は満喫プロジェクトの対象公園。同省は国有地内の休廃業施設の撤去に向け、所有者側に建物の撤去、土地明け渡しを請求する方針という。

 また、大山隠岐国立公園では鳥取県大山町が景観改善に取り組んでおり、廃業した飲食、宿泊施設を国の交付金を活用して改修し、先ごろ観光案内所やカフェを備えた施設として生まれ変わったという。

 休廃業施設を整理するのは大変だが、国立公園を世界にアピールするならば、良好な環境整備に国はスピードを上げ、本腰を入れてほしい。


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