【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 21】ジャーマン・インターナショナル CEO ルース・マリー・ジャーマン氏に聞く


訪日対応にSNS生かせ 「道の駅」を観光の拠点に

 ――日本の観光に携わるきっかけは。

 「私は以前、外国人向けのサービスアパートメントの企画、販売を行う仕事に従事するなど、4万人以上の外国人と関わった。話をする中で、外国人が観光をする際に、より日本を理解して多くの地域とつながるサービスが提供できればと思い、インバウンド戦略の立案や外国人の潜在顧客への営業サポートをする会社『ジャーマン・インターナショナル』を立ち上げた」

 ――現在の取り組みは。

 「英語のフェイスブックページの立ち上げ、運営代行サービス『ジャーマン・インターナショナル・フェイスブック・オペレーション・サービス』(JIFOS)の提供や全国各地の国際化対応、異文化コミュニケーションのトレーニング、サポートなど、より奥深い日本への導線づくりの支援を行っている。日本が提供する情報を説明・発信し、効率的な消費を促したいと考えている。現在、SNSはインバウンドの誘客において、情報発信、交流ツールとして欠かせない手段だ。中でも、フェイスブックはグローバルプラットフォームであり使わない手はない。今ある日本語のフェイスブックページやウェブサイトのコンテンツから、外国人が面白いと思うものを英語化、外国人視点で継続的に掲載し続けることだ。継続から自然と会話やコミュニティが生まれ、長期目線での認知度向上につながる。また、何より海外にいて日本旅行の計画を立てる時にコンタクトができる。来日前のアピールこそがインバウンド作戦のコツとなる」

 ――現在、さまざまな施設の支援をしているが。
 
 「支援する施設の一つに江の島アイランドスパがある。タトゥーと館内での写真を禁止しており、外国人に向けてフェイスブックでの周知、現地での準備・対応に取り組む。訪日客は、ウェブで情報を得てから訪れる人が多い。施設のウリはもちろん、注意事項の発信は必須だ。また、情報を見てない人のために、現地で誤解のない説明をするオペレーションを日ごろから準備することが大切になる。既存のルールを親切に説明し、尊重してもらうことが弊社の主義。外国人の顧客に合わせることも大事だが、合わせられないものもあり、企業が守りたいルールやマナーなども含め、外国人顧客への発信ソリューションを一緒に考えていく」

 ――日本の観光をどう見ているか。

 「日本はうまくやっている。まず、JNTO(日本政府観光局)が訪日客の誘致を行い、ゴールデンルートに訪れる流れがある。スマートフォンの普及、Wi―Fiの充実により、どの場所でも情報が取れる時代となった。今後は、訪日の個人客がレンタカーを利用して地方を巡る旅なども増えるはずだ。現在訪れている訪日客に耳を傾け、疑問や課題を知り、対応してほしい。また、地方へ訪れる人が増えると、情報発信や販売の拠点が必要になる。私は『道の駅』がその核となると読んでいる。地方観光の情報や伝統工芸品や食など販売の拠点となる。これ以上の場所はない」

 ――道の駅の魅力とは。

 「道の駅は、世界に点在する地域のファーマーズマーケットに類似し、世界の観光地域づくりの流れに合う。その場所ならではのおいしい食材や職人が作る工芸品は魅力的で、訪日客は行かなければ損な場所となる。ハワイで例えると、お土産、食品、酒までそろう店『ABCストア』のようなものだ。管理する組織も、外国人客がどれだけ訪れたかの確認が容易であり、地産地消など地域活性化の新たな消費者として貢献にもつながるだろう」

 ――日本の観光課題は。

 「丁寧すぎて、情報が多すぎることだ。絵をもっと使うほうが分かりやすい。大阪の堺市で、緑色の人が逃げているサインがあった。災害時での避難を指すものだとすぐに分かる。駅のナンバリングも分かりやすい。訪日客を接客する場合にも、入り口はイメージで表現して、現場の受け入れはシンプルで十分だ」

 ――多言語化はどう取り組むべきか。

 「まずは英語から。日本を訪れ、観光で多くの金を落としてくれる外国人は年収1500万円以上の富裕層。この人たちは、どの国籍の人でも英語ができ、自立心がある層だ。長期滞在する人も多く、ゴールデンルート以外に、SNSを見て出掛ける人も多い。国により、中国圏だとウェイボーであったりと違いもあるが、グローバル層は英語の案内で大丈夫だ。現在の訪日客を試験として、経験を今後の重要なサンプルとしてほしい。そして、見つけた問題点を、少しずつでも改善することも大切だ」

 ――観光で活躍できる人材については。

 「『代表取締役兼総務課長』のような人が必要。構想など大きなこと、個別の販促など小さなことの大小両方に対応できる現場経験のある人材が適任だ」

 ――訪日客数についてはどうみているか。

 「昨年は、過去最高の2869万人となった。今後はますます増えるだろう。外国人労働者に門を開きつつある環境も後押しする。私は実際にハワイで外国人観光客が増える様子を経験してきた。2030年には8200万人まで達する可能性と希望を感じている。10年後にはお客さまの3割が外国人になると思う。まだ、日本には考える貴重な時間が与えられている。対応策を考え、実践し、改善を重ね前に進んでほしい」

 ――訪日客を知るには。

 「まず、世界の口コミサイトであるトリップアドバイザーで地域のナンバー1の施設や狙いたい顧客層が宿泊する施設で客を見てほしい。なぜ1位なのか、客がどのように行動しているかを見て体感するべきだ。そこにヒントは必ずある」

 ――今後の目標は。

 「組織が、多くの地域の観光大使となり発信支援の一助となることだ。私はニックネームで『ルーシー』と皆さんから呼ばれているが、『日本と関わりを求めるなら』『外国人とのネットワークを作るなら』ルーシーに聞いた方がいいよといわれる組織にしたい」

ルース・マリー・ジャーマン=米国ハワイ州出身。リクルート、スペースデザインを経て、2012年4月にインバウンド戦略・対外国人向け営業のコンサルティング会社を起業する。

【長木利通】

 

 
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