【私の視点 観光羅針盤 293】プロセスエコノミーの拡大 吉田博詞


 関係人口の拡大が叫ばれている中で、「プロセスエコノミー」というキーワードの注目が高まってきている。地域の応援団を形成していく手法において、出来上がったものを応援してもらう手法もあるが、企画段階、そして構築段階からそのプロセスをしっかりと共有して、その中での関わりを大きくするプロセスである。

 気づいたら興味、関心がより強いものとなり、関係者とのつながりも強化され、応援団が自分事化していくよう流れが加速するイメージである。クラウドファンディングなどで応援したことがある人であれば、イメージが湧きやすいかもしれないが、せっかく自分が応援したプロジェクトは、何とかして目標を達成してほしい、良い形で成功してほしいという気持ちがより強くなってくる流れだろう。

 地域の応援団の形成において、オモイに触れる、そのオモイに共感してつながりで消費が拡大していく最近のトレンドに関しては、ここでも何度か触れてきた。

 古民家を再生してカフェを誕生させる、荒廃した畑を再生させる、地域の思いを込めた祭りを作り上げる、新商品の開発をしていく、着地型の滞在企画といった、これまでは企画・遂行をプロに外注していたもの、そのもの自体も多くの人を巻き込みながら展開していくという流れである。

 より関係強化において、このプロセスエコノミーの概念で、まずはなぜそれをやりたいか、やる必要があるか、やってどんなものを実現したいかをしっかりと背景・ビジョンを含めて主催者が自分の言葉でアツく伝えることが必要だろう。そして、この指とまれ式にその応援団を募っていく。その時、応援の手法をいくつか提示していくこともポイントになる。

 金銭、アイデア、物理的な稼働、スキル、進行管理、情報発信等、さまざまな手法での関わり、応援の仕方がある。それらに関して、ネットのコミュニティを活用しながら、大きな拘束をされることなく、緩くその人のできる範囲でサポートしあっていくのがポイントになる。

 親戚や、近所の接点が多いお子さんには気づいたら感情移入してしまうのと同じように、成長のプロセスを随時共有していきながら、そこに各種つながりや関わりを刻み込む。

 時に、大きなイベントで一緒にその空気を共にするという流れを構築することができれば、プロセスにおいてしっかりとした関係値が構築され、サービスが出来上がった時点で大きな応援団が出来上がっており、その応援団が事業の発展をサポートしてくれるという流れができるだろう。

 このプロセスエコノミーは、観光再生との相性が非常に良いものだと考えている。従前の企画開発やプロモーション手法としてではなく、主催者がオモイをもって各所の再生のビジョンを語ってくれればこの動きがもっと加速して、関係人口が拡大していくに違いない。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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