【特別対談】高山市長 田中 明氏 × 飛騨・高山観光コンベンション協会会長 堀 泰則氏則氏


観光復活へ官民一体、足並みそろえ

飛騨・高山観光コンベンション協会会長 堀 泰則氏(左)、高山市長 田中 明氏(右)

 

 ――昨年9月の市長選で初当選されましたが、市政における観光の位置付けは。

 田中 市の基幹産業であり、市経済のけん引役です。持続可能な地域づくりの実現のために観光振興は欠かせず、伝統文化、郷土教育、環境、農林畜産業、人材育成などあらゆる側面において、地域課題の解決のために観光を活用していきたいと考えています。

田中市長

 

 ――市長の前職は飛騨・高山観光コンベンション協会の専務理事で、堀会長とともに飛騨高山の観光を引っ張ってきました。

 堀 市長はもともと市の職員であり、観光の実務経験も豊富です。観光の重要性も理解されており、非常に心強いですね。高山のブランド力を一層高めていくため、官民一体で推進していきたい。

堀会長

 

 ――コロナ禍で観光業は大きなダメージを受けました。入込状況は。

 田中 コロナ前は473万人ほどの入り込みがありましたが、21年は198万人と200万人を割りました。その後、行動制限の緩和もあり、22年は309万人となり、回復傾向にあります。コロナ禍前の19年比では約65%となっています。

 コロナ禍の飛騨高山は人も少なく静かでしたが、それがアクセスもあまり良くない中山間地本来の姿ではないかと思いました。そこにかつては400万人を超える人が訪れていた。観光の力はすごいと改めて感じますね。

 堀 インバウンドも目に見えて戻っており、ホッとしています。課題の一つは人手不足で、稼働率も低下しています。簡単に解消できないと思いますので、その中でどうやりくりしていくのかを考えなければなりません。外国人労働者の活用なども視野に入れ、市全体で対応すべきだと思います。

 

 ――飛騨高山の観光魅力をどう捉えていますか。

 田中 古い町並や高山陣屋に代表される歴史的建造物はもちろんですが、日本一広い面積の中にはさまざまな魅力があります。乗鞍岳や五色ヶ原の森といった大自然、露天風呂の数日本一といわれる奥飛騨温泉郷、日本で唯一の2階建てゴンドラを有する新穂高ロープウェイなど、数えきれないほどの観光コンテンツがあります。

 その中にあって、一番はやはり地域の方々の人柄の良さとおもてなしの精神です。旅人をもてなし、喜んでもらうのが何よりというDNAは連綿と受け継がれています。

 堀 飛騨人は奥ゆかしいというのか、とても無口で、説明下手(笑い)。道を尋ねられてもうまく説明できないので、連れて行ってあげる。旅人は親切心と捉え、ここが好きになるという具合ですね。

 

 ――観光振興についてはどんな事業展開を。

 田中 行政と民間団体・事業者との役割分担を明確にし、それぞれの得意分野を生かすことで効果的、かつ効率的な施策を実施していきます。

 先ほども言いましたが、持続可能な地域づくりのために観光を活かすことと、現在の観光客のニーズに合わせた体験プログラムの利用促進事業と、若年層の飛騨高山ファンを増やすための教育旅行促進事業を推進します。

 例えば、2月末まで、教育旅行で泊まる児童生徒・引率者を対象に、加盟店で使えるクーポン(千円分)を発行する「飛騨高山教育旅行クーポン」事業を実施しました。誘客の効果もあり、継続実施したいと考えています。

 

 ――観光予算はどのくらいですか。

 田中 10億円ほどです。誘客に関する部分においては23年度は約3億円を計上し、ここ数年の当初予算では最大規模となります。

 市全体の予算は830億円ほどで、観光予算は2%弱と小さいですが、投資効果はとても大きいです。市民に対してもっと周知していく必要性を感じています。

 堀 いままでは7億円ほどでした。増えてはいるのですが、やはりもっと増額していただきたい。観光施設の運営や維持修繕等の費用ばかりが目立って、「観光に予算を使いすぎでは」という指摘もありますが、プロモーションの部分はわずかな金額です。もっと理解を深めていただけるよう、われわれも努めていく必要があります。

 協会の今後の事業の大きな柱の一つは「宿泊税」の導入です。市長も公約の一つに掲げており、ぜひ実現したいですね。いろんな意見があることは承知していますが、観光関連施策の財源を確保する上で、極めて有効であり、皆さんの理解を得たい。

 田中 時期は定かではありませんが、できるだけ早く実現したい。条例化して、使途を明確にし、誰が市長になっても続けていけるようきちんとルールを作ります。

 

 ――堀会長も常々言っていますが、広域観光を視野に入れた取り組みが進んでいますね。

 堀 来年春には北陸新幹線敦賀延伸、26年には中部縦貫自動車道の福井―郡上間がつながります。広域移動の利便性が向上し、飛騨高山を滞在拠点として上高地や金沢、永平寺などがワンデートリップ内となります。

 高山市と松本市にまたがる北アルプスを一大観光圏として推進する「松本高山ビッグブリッジ構想」がありますが、2月末には、両市を結ぶ広域観光ルートの名称を「Kita Alps Traverse Route(北アルプス・トラバースルート)」とすることが決まりました。高山、松本、金沢、福井の素晴らしい観光資源を組み合わせ、観光客を感動させるルートを作っていきます。

 田中 自治体との連携強化も積極的に進め、一緒になって誘客に努めていきます。

 

 ――アフターコロナ時代の飛騨高山観光はどうあるべきでしょうか。

 田中 コロナ禍によって観光客のニーズ、志向が変化しました。そこをしっかりと認識し、時勢にあった取り組みを推進することが必要で、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した観光振興に力を入れます。

 堀 団体から個人に大きくシフトし、この流れは変わりません。個人を意識した観光地づくりが大事です。滞在時間を延ばし、観光消費額を増やしてもらうため、体験プログラムの充実も欠かせません。

 着地型商品の造成も積極的に進めます。インバウンドの回復を受け、滞在型観光地としての充実を図り、MICE誘致にも取り組みます。幸い、受け入れ施設は充実しており、規模、機能は地方観光都市として充実しています。さらに客室数も25年には5千室を超えます。これを活かさない手はありません。

 また、観光DXの推進も図り、地域経済の活性化や持続可能な観光地を目指したいと思います。

 

 ――最後に業界向けにメッセージをいただきたい。

 田中 雄大な自然、伝統文化、食、そして人。飛騨高山には魅力ある資源がたくさんあります。訪れて、触れて、接していただきたい。「輝く市民が暮らすまち飛騨高山」を実現するため、全力で取り組みます。

 堀 旅の在り方が変わってきます。もてなし側の意識も変わるべきです。人手不足の中、サービスの在り方も検証しましょう。そして新しい時代への対応をしましょう。

 

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