【焦点課題】日本ハウス・ホテル&リゾート  武藤清和 氏に聞く


新社長が挑む事業拡大計画

箱根芦ノ湖・仙石原に新旅館 多能工、社員教育で底上げ

 ――社長就任の抱負を。

 「以前は日本ハウスで日本の家、檜(ひのき)の家など住宅、不動産業を行っていた。住宅もホテルも一期一会の縁で成り立っている。また、お客さまを幸せにしたいという考え方はどちらにも通じている。満足できるおもてなしを提供し、お客さまに喜んでもらい幸せにすることで、それを社員がわが喜びとして働けるような環境をつくりたい」

 ――宿泊施設の運営状況について。

 「北から(1)ホテル森の風 鶯宿(岩手県)(2)ホテル森の風 那須(栃木県)(3)ホテル四季の館 那須(同)(4)ホテル東日本 宇都宮(同)(5)ホテル森の風 立山(富山県)―の五つの施設を運営している。森の風ブランドは良質な温泉を提供し、全て掛け流しだ。部屋では高級ルーム『四季彩』を設け、食事は地域の旬の食材を提供している」

 ――経営理念は。

 「グループの経営理念として(1)使命感とビジョンとして『社会に貢献する』(2)社員の心構えとして『報恩感謝の心で行動する』(3)目指すべき姿として『物心両面の幸福を追求する』―の三つがある。ホテル業を営む上では、おもてなしの心でお客さま満足を追求し、質の向上と規模の拡大を目指している」

 ――座右の銘は。

 「坂本龍馬の言葉に『世に生を得るは事を成すにあり』がある。命は神様から与えられたもの。人は寝て次の日は目覚めるか分からない。朝目覚めた時は1日の始まりであり、何かをする役割が与えられている。龍馬は藩を超え、日本という国を考えて行動していた。私はお客さま、社員の幸せを追求し、それが使命だと思い行動している。新型コロナで大変な時期だが、前を向いて立ち向かいピンチをチャンスに変えたい」

 ――新型コロナへの取り組みは。

 「館内では3密対策、衛生管理を徹底するなど、安全安心な体制を構築した。営業は5月の休館後、社員全員で3密対策に向けて研修、訓練を行い、6月から営業を再開した。チェックインでは検温、消毒、マスク、フェイスシールドの着用のほか、食事の提供では食事会場でソーシャルディスタンスの確保、部屋食の対応、提供回数を減らして密接を防いでいる。団体の受け入れでは、宴会場のレイアウトを変更し、受け入れ人数を通常の3分の1での利用へと変えている。営業には新たなレイアウトを持たせ、3密対策の基準に基づき提案を行わせている」

 ――生産性向上ではどのような取り組みを行っているか。

 「以前から多能工化を推し進めている。社員は、社内全体の仕事が見えるようになり、効率化、活性化につながっている。森の風那須では、工数軽減、作業の効率化として自動精算機の導入も行っている」

 ――人材教育は。

 「これまでにも料理コンテストを行い社員のスキル、意識の向上を図ってきたが、3月からは『ホテル塾』を実施している。社員約20人を1グループにし、1泊2日でスキルだけでないわが社の思想、企業理念、社員心得といった『人生をいかに生きるか』を皆で勉強している。また、社内では社員自ら手を挙げて行動を行い、新しい企画が次々と生まれている。県内からの需要を掘り起こす『ジ・モットコンシェルジュ』はその一つだ。全国的にはまだ知名度のない地元の良いものを社員全員が探し出して発信している。活動は観光、地域の活性化につながっている」

 ――今後の施設運営での計画は。

 「2022年春ごろには『ホテル四季の館 箱根芦ノ湖』(神奈川・箱根)、23年春ごろには『ホテル森の風 箱根仙石原』(同)の2軒の新規開業を予定している。箱根芦ノ湖は全30室。雲海テラスからの眺望が自慢で、非日常感を演出する。施設は武家屋敷風佇まいで、源泉掛け流しの温泉が楽しめる。高級フレンチの食事も味わえ、極上の隠れ家といえる。元々は社員研修施設だったが、温泉、芦ノ湖を眼下に望む景色が素晴らしく、温泉も良質なためお客さまに提供することにした。箱根仙石原は全46室。テーマは『竹林のファミリーリゾート』だ。中庭の眺めや露天風呂、檜風呂を楽しむほか、立地が良いことから、箱根観光の拠点として利用してもらいたい」

 ――今後の事業計画について。

 「再来年には宿泊施設は7施設となるなど、3年後の売り上げは19年比で140%を見込んでいる。将来宿泊施設は熱海、千葉・房総など首都圏近郊にも増やし、5年後には10施設まで広げていきたい。また、お客さまはもちろん、社員の幸せのため、やりがい、生きがいを持てる会社にし、共に成長できる環境を作っていきたい」

【聞き手・長木利通】

むとう・きよかず=1979年3月日本ハウスホールディングス入社。東海・関西ブロック統轄兼名古屋支店長などを経て、2011年11月に取締役に就任。18年11月に取締役不動産統括本部長兼マンション事業部長兼投資事業部長に就任し、今年2月から現職。

 
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