編者が所長を務める日中交流研究所が主催する2018年、第14回「中国人の日本語作文コンクール」の受賞作品を集めた作品集。中国の若者たちの日本に対する生の声を80点余収録している。
最優秀賞は復旦大学日本語文学部4年の黄安琪(こう・あんき)さんの作品で、タイトルは「車椅子で、東京オリンピックに行く!」。
家族で一番の仲良しという祖母が2008年、交通事故で車椅子生活となり、楽しみにしていた北京オリンピックを見ることができなかった。
それから10年たち、黄さんは大学生となり日本への短期交流プログラムに参加。ある日、京都の路線バスに乗ると車椅子の客が運転手や介護者の助けを借りて乗り込んできた。出発時間が遅れたが、乗客の誰もが文句を言わず、運転手の「ご協力ありがとうございました。よい1日となりますように」との言葉に思わず目頭を熱くした。
都会も地方もバリアフリーが進む日本を魅力的な国だと感じた黄さんは、祖母の夢だったオリンピック観戦を祖母と一緒に日本で実現したいと強く感じたという。
ほかの入選作も、ファッション、グルメ、ゆるキャラなど現代日本の魅力を述べたり、歴史的背景から生じている誤解とその解消に言及したりと、剛柔両面の内容をネイティブ顔負けの文章でつづっている。
中国の若者が日本をどのように見て、感じているのか。その一端が分かる興味深い内容が詰まった一冊だ。
定価=2千円+税。発行=日本僑報社TEL03(5956)2808。