【日本政府観光局インバウンド最新リポート 93】サッカー活用で認知度向上 JNTOフランクフルト事務所 居石 彰 上席次長


サッカーの長谷部選手(中央)らを起用した訪日観光事業メディア発表会

訪日事業の推進

 旅行好きの国で知られるドイツでは、日本の入国規制が緩和された10月ごろから、JNTOフランクフルト事務所への訪日観光に関する問い合わせやパンフレットの郵送依頼が増加しており、スタッフは忙しい日々を過ごすことで、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた変化を実感している。ドイツ人が、コロナ期間中にため込んだ旅行や娯楽への欲求は、いま、大きな熱量と、おそらく普段より大きめのお財布を準備して動きだそうとしている。同市場において、新たな訪日観光の関心層の拡大を図る絶好の機会となるであろう。

 しかしながら、潜在的需要層や無関心層の掘り起こしは、言葉で言うほど簡単ではないのが現実である。ドイツにおいても、旅行好き、日本好きの方々は、訪日観光の魅力や、世界に誇る日本食のような基本情報は認知しているし、時には積極的に情報を求めてくる。これに対して、無関心層に対して「認知の壁」を越えてリーチすることは、いつの時代、どの分野においても、大きな試練や失敗を伴うハードルの高いミッションであるが、常にチャレンジすべきプロモーションの神髄ではなかろうか。

 現在、ドイツの「日本」無関心層へ訪日旅行の魅力を届けるための手法の一つとして取り組んでいるのは、同国で絶大な人気を誇る国民的スポーツ「サッカー」の活用である。19年の調査結果によると、ドイツ人の63.3%がサッカーファン(うち52.4%は旅行好き)であり、また、巨大な関連メディアが存在している。さらに22年はワールドカップイヤーであるため、日本と同様に普段は関心の低い層のサッカー熱も高まることを期待できた(ドイツ代表は予想よりも早くワールドカップから姿を消してしまったが)。

 このため、ドイツ・ブンデスリーガの人気クラブ「アイントラハト・フランクフルト」とパートナーシップを締結し、動画制作、メディア発表会の開催、ウェブやSNSによる情報発信等に取り組むこととした。

 ここで重要なのは、サッカーと訪日観光プロモーションの切り分けである。例えば、今回制作した長谷部誠選手とゲッツェ選手のトーク動画では、冒頭の約5分は、ワールドカップやサッカーの話題のみとして、徐々に日本観光や文化等の紹介や日本クイズに移行していく内容とした。サッカー動画を見ていたら、いつの間にか、日本の魅力を紹介されていたというトリック、いや手法である。

 この結果、本事業関連動画・SNS等のリーチ回数は、ドイツ市場において560万回(22年12月末現在)を超えており、第2フェーズとして、同クラブが11月に来日した際の観光地訪問や日本食、文化体験等を収録した訪日動画を今後公開する予定だ。

 このような取り組みを展開することにより、サッカーファンを含む多くのドイツ人に訪日観光の魅力を認知してもらい、今後の旅行計画の有力な候補地となることを期待している。

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