【地方再生・創生論 348】インフラ問題は待ったなし 松浪健四郎


 横浜市の港北ニュータウンに家を建てて35年がたつ。注文住宅で、ガッシリしている一戸建てである。が、昨年、風呂のガス釜が火を吹き交換した。今年に入るとトイレの調子が悪くなり、これも新品と交換したところで、水道の水が止まらなくなってしまった。すでにわが家はガタガタ、老朽化しているのである。ちなみにガスコンロも一つしか使えない状況下にある。

 どんな素晴らしい製品でも老朽化する。玄関前のコンクリートもヒビだらけ、どうもやり直しが必要のようだ。わが家でさえ、生活するためのインフラが無残な状況にあるのだから、公共のインフラも戦後から80年になろうとしているのだから気にかかる。先日、中央高速道を走り、駒ヶ根市に行ってきたが、笹子トンネルを通過する際、あの悲劇的な大事故を想起した。全国の道路、特に高速道路が心配である。あの淡路・阪神大震災を記憶する者にとって、高速道路の倒壊は忘れがたいばかりか、自然のパワーの強大さを教えられた。25年前の大震災、忘れられないのは私一人だけではあるまい。

 自民党本部(千代田区永田町)の5階にある国土強靱(きょうじん)化本部は、全国からの陳情客であふれている。令和5年度の補正予算でも、国土強靱化のためのウエイトは重かった。全国にあるインフラの老朽化が進んでいるため、各自治体も必死なのである。事故が起こる前に手を打っておかねばならない。自然災害の大国であるため、地震、津波、台風、集中豪雨、河川堤防、恐い問題が山ほど横たわる。

 各自治体は、まず道路橋のチェックを急がねばならない。1964年の東京オリンピック前後の建設が多数を占めるので老朽化が進んでいる可能性が高い。自治体内にあるトンネルは大丈夫だろうか、早期措置の必要なものはないか入念なチェックが求められる。建設から半世紀以上の経過する道路、橋、港湾など、あらゆるインフラが老朽化しているのだ。

 全国のあちこちで水道管の破裂事故がある。水道管の老朽化も進んでいるゆえ、チェックを急がねばならない。都市部ではガス管のチェックは大切で、ガス漏れは大事故を招来させる。水道やガス、電気等の被害は深刻で住民の生活を困難なものにする。台風や地震の自然災害からインフラ事故が生じる場合も多いため、自治体は平素からのチェックのためのチームを結成しておくべきであろう。自然災害の2次災害が懸念されるが、これはおしなべて住民の暮らしと直結している。

 地域温暖化の影響で、スーパー台風や集中豪雨になる被害が地球規模的にも拡大し始めた。パキスタンの大水害などは考えがたいものであったが、降水量は過去の資料は参考にならぬほど多い。泥の文化をもつ砂漠地帯にあって、水害ほど恐ろしいものはなく、犠牲者を多く出した。予測できない気候と降水量、河川管理施設をはじめ港湾岸壁等の管理も徹底して行い、「急」や「突然」に対応せねばならない。

 家屋の老朽化を防止するため、屋根の手入れやペンキの塗り直しをしても維持のために金がかかる。同様にインフラ整備と管理、維持に予算が求められる。学校や公共施設の耐震化工事は進んでいるが、それだけでは万全ではない。老朽化にいかに対応していくか、待ったなしのインフラ問題である。かつて、「ハードよりソフトで」とか、「コンクリートから人へ」とかの二分法の政策で国民を誘導しようとした政党があったが、無責任である。健全なインフラがあってこそ、国民生活ができるのであって、先進国と途上国の差はインフラにあるといえる。

 政府の予測では、インフラを修繕したり更新する費用は、今後40年で547兆円が必要だという。この試算は、災害が起こった場合の費用は含んでいない。国民の安全を守り抜くためには、政府と自治体はインフラに目を配り、まず安心して生活できるようにすべし、だ。

 それにしても、能登半島の元旦の地震には驚かされた。常に危機意識を持たねばならないと教えられた。

 
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