【和歌山県すさみ町特集】地域拠点と人材活用 サテライトオフィス事例


美しい海岸線に山が迫るすさみ町。キャンプサイトなどが整備されている

ウフル(白浜町)

地元の課題を解決へ

 デジタルマーケティング支援やクラウド・IoTシステムの構築支援などを行うウフル(東京都港区、園田崇史社長)。同社は19年から和歌山県白浜町にオフィスを構え、すさみ町はじめ和歌山県内の市町村や企業との案件にも積極的に取り組んでいる。

 同社の白浜オフィスは、同社が18年に和歌山県と白浜町との間で進出協定を結んだことによるもの。同社ではこのオフィスを、IoTを活用した次世代都市ソリューション開発に向けた実証拠点、開発拠点と位置付け、ワーケーション環境の構築にも取り組む。地元採用者ら3人が常駐し、プロジェクトベースで東京本社などから多くの社員が訪れている。

 白浜オフィスに常駐する社員の1人、那須一徳氏は、地元・白浜出身。白浜オフィスの開設に合わせて入社した。常駐社員として、地元出身者として、宿泊先などのリストアップと情報提供なども行うが、特に重要な役割は、「地域(現場)と企画開発部門の橋渡し役」だ。白浜町の商工会から県レベルまで地元とのコミュニケーションを密にすることで信頼関係を深めている。「地方では地元の人と何回会ったかでプロジェクトの進捗(しんちょく)が変わってくる。さらに那須が地域に溶け込んでいることで、東京の会社に対する地元の人の心理的なハードルも下がる」と話すのは、昨年7月の入社以来、すでに20回以上白浜に滞在しているという廣羽裕紀氏。廣羽氏が「観光×防災情報アプリ」の企画開発などを手掛ける中で感じるのは、地元の人との対面コミュニケーションの重要性だ。東京にいては分からない、地方ならではの考え方や課題、ニーズなどを肌で感じることで、その地域に合わせた提案が可能になったという。

 白浜を拠点にすることで生まれる地元とのつながりは、同社の持つテクノロジーの可能性を広げている。すさみ町では、同社のモバイルオーダーシステム「売り子ーる」を活用。同町内の「南紀道の駅すさみ」に隣接するホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット・和歌山すさみ」の宿泊者向けに、道の駅で販売する特産品や飲食物をオンラインで注文できるサービス「すさみ夜市」の提供を開始した。昨年の和歌山市の大規模断水ではいち早くニーズをくみ取り、同社開発のデータ連携基盤を活用して、給水所とその混雑状況などをリアルタイムで地図上に可視化できるサービスを提供。住民、自治体双方から高く評価された。

 スピード感が求められる開発業務では、業務の高効率化も重要だ。コロナ禍で都市部では在宅ワークが浸透したが、同時に業務環境の確保は課題だった。「在宅ワークだと、小さい子どもがいる場合どうしても効率が落ちるが、白浜では集中して取り組める。昼間に町に出たときの、ゆったりした時間の流れもリフレッシュにいい。東京では1時間半かかっていた通勤時間もなくなり、東京で働くよりも白浜で働くメリットの方が大きい」と廣羽氏は話す。

 現在白浜オフィスに来る同社社員のほとんどが平日を中心に白浜に滞在し業務に勤しむ。「廣羽のように高頻度で白浜に来る社員が増えてきた。社員用の宿泊施設の整備やアクティビティへの参加を促進することで、地域課題やニーズを的確に捉え、社会課題の解決に取り組んでいきたい」と那須氏は語った。

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