福島県福島市の高湯温泉観光協会は、高湯温泉の温泉水で柿の渋を抜いた「温泉柿」の商品を開発。原発事故の影響で生産が中止となった特産品「あんぽ柿」(干し柿)の材料である蜂屋柿を使った。後藤秀人専務理事(旅館ひげの家専務)は「農家の人たちが悲しい思いをしているなか、商品化で少しでも力になれれば。高湯温泉ががんばっていることも県内外に情報発信したい」と話す。
桃の漬物などを製造する「みずほフーズ」(福島市)と共に開発した。柿のヘタの部分を12時間ほど高湯の硫黄泉に浸け、その後、密封すると約1週間で渋が抜ける。「ぱりぱりとした食感が特徴。蜂屋柿を生で食べたことのない生産農家の人もその味に驚いた」(みずほフーズ)。
今年の温泉柿は試作品として1トンほど生産。今月から会員の宿泊施設やドライブインの11軒でデザートや1品料理などに調理して提供している。
旅館ひげの家では「温泉柿の羊かんを黒マメとミントを添えて夕食のデザートに出している。お客さまからは、柿そのままの味でおいしいととても好評だ」(後藤専務)。
高湯温泉は09年に開湯400年を迎え、10年6月には温泉地内のすべての宿泊・入浴施設が掛け流しである「源泉かけ流し宣言」も行った。今年は風評被害が広がるなか、温泉水で渋を抜くという明るく楽しい話題の提供で福島と高湯を元気付けたい考えだ。
温泉に浮かべた蜂屋柿