長野県の飯山市観光協会は、2月27日に開いた臨時総会で、4月に有限責任中間法人化し第3種旅行業事務所として登録申請することを決めた。着地型旅行商品の造成に取り組むとともに、法人や団体への直接営業、インターネットでの直販事業も行う。市内200軒の宿泊施設の大多数が民宿やペンションといった中小事業者であることから、大手旅行会社に頼らない、新たな販売チャンネルの開発を進める。
飯山市は、戸狩、斑尾、信濃平、飯山市街、北竜湖などの観光地を抱える。遅くとも7年後には北陸新幹線の飯山駅が開業する見込みで、今回の旅行業事務所登録は「そのメリットを地域が十分に享受するための観光基盤充実の第一歩」(飯山市観光協会の小泉大輔氏)。
地域資源を生かした着地型旅行商品で「心癒される日本のふるさと、北信州いいやま」のブランド力を高める。旅行企画は(1)「森林セラピー」「歩く旅」といった健康志向(2)農業などと連携したグリーンツーリズム(3)団塊の世代をターゲットとしたふるさと移住体験(4)「雪」と「日本のふるさと」を全面に出したインバウンド――などを切り口にする考え。宿泊事業者がこの森林セラピーやグリーンツーリズムなどの担い手でもあり、「民宿やペンションに2泊、3泊と、泊まってもらえるようにしたい」と小泉氏。
飯山市観光協会の会長職はこれまで市長の兼務だったが、新法人の初代会長には高源院(あじさい寺)住職、民宿高原荘オーナーで戸狩観光協会長を務める江澤一遠氏が就任する。江澤氏は、戸狩温泉スキー場再生の取り組みを先導しており、市観光協会の会長として、民間感覚でのその手腕が期待されている。
5月中旬の旅行業法施行規則の改正によって第3種旅行業者は、営業所の所在地の市町村と隣接する市町村の区域内を対象に募集型企画旅行を実施できるようになる。第3種は、国内の募集型企画旅行を企画できる第2種と比べて、営業保証金や最低資本金の金額が低いため新規参入しやすい。
飯山市観光協会は任意団体で、現状でも第3種旅行業者の登録は個人事業者として可能だが、この場合、事故発生時の責任が一個人に及ぶという不都合がある。そこで、現状の組織体制を崩さずに移行できる法人格という理由から、営利を目的としないが、収益事業を柔軟に実施できる有限責任中間法人の道を選んだ。
飯山市観光協会は、「旅行業事務所登録をきっかけにして、協会として地域観光を担う役割をより一層強化するとともに、地域振興に貢献していく」と意気込む。
飯山市観光協会の新会長となる江澤氏