長野県山ノ内町の地獄谷野猿公苑には年間4万人以上の外国人旅行者が訪れる。ただ、多くは地元に宿泊しない—。同町の湯田中渋温泉郷、志賀高原の旅館経営者らは、地元への宿泊を増やそうと、有志のグループ「スノーモンキータウン」を立ち上げた。滞在の魅力を知ってもらうため、飲食店や観光施設と連携し、店舗や施設の情報を掲載した英語版冊子を発刊。インバウンドの消費を地元に引き寄せ、地域の活性化を目指す。
地獄谷野猿公苑のニホンザルは“スノーモンキー”の名で知られ、欧米豪を中心に外国人旅行者に人気が高い。2013年度の来場者数約15万人のうち外国人は約4万2千人に上っている。
グループの発起人の湯田中渋温泉郷の一茶のこみち美湯の宿の斉須正男社長は「地獄谷野猿公苑を訪れる外国人のうち湯田中渋温泉郷に泊まるのは2割ほど。スノーモンキーの人気を生かせていない。志賀高原とも連携して、温泉や食、まち歩き、スキーなど滞在の魅力をPRし、地元に宿泊する外国人を増やして地域での消費を拡大したい」と語る。
地域活性化に同じ思いを持つ約20人が昨年12月にグループを結成。外国人旅行者に役立つ情報を発信しようと、英語版の冊子「スノーモンキータウン・ガイドマップ(第1号)」を1月21日に発刊した。B5判カラーで64頁。5万部を発行して無料配布している。
冊子には、湯田中渋温泉郷、志賀高原にある旅館・ホテル、飲食店、各種商店、観光施設など100軒以上の情報を紹介。クレジットカードや無線LANの対応状況、英語の飲食メニューの有無などを絵文字(ピクトグラム)で示した。地図や交通情報なども掲載している。
冊子発行の費用は、行政の補助金には頼らず、事業者が出稿する広告の収入でまかなった。情報の掲載に関する協力も、旅館・ホテルの若手経営者らが店舗や施設を訪れて取り付けた。
スノーモンキータウンの英語版ウェブサイトの開設も準備中。また、ガイドマップの第1号はウインターシーズン号として製作したが、次号はグリーンシーズン号として発行したい考え。誘客の拡大に向け、町内の事業者・地域間の連携はもとより、隣接自治体とも連携して冊子の情報を充実させることも検討していく。
訪日外国人旅行者数が年間1300万人を超え、その旅行消費額が2兆円を超える中、インバウンドの経済効果を地方が実感できるようにし、いかに地域の活性化につなげるが課題。斉須社長は「既存の顧客を大切にしつつも、新しい顧客を開拓しないと、地域の観光は衰退してしまう。行政に先駆け、地元の事業者が一体となってスノーモンキータウンを世界に売り込みたい」と話している。
旅館経営者ら有志のグループで発刊した「スノーモンキータウン・ガイドマップ」