帝国データバンクによると、温泉旅館運営の辻のや(石川県小松市)と関係会社の粟津観光金閣(同)の2社は、8月16日に金沢地裁小松支部から破産手続き開始決定を受けた。
辻のやは、1956年(昭和31年)10月創業、59年(昭和34年)4月の法人改組を経て、加賀温泉郷の一つ、小松市の粟津温泉内で温泉旅館「辻のや花乃庄」を経営していた。74年10月に温泉旅館「金閣」を買収するほか、段階的に旅館施設の大型増築投資を実施して業容を拡大。客室63室、最大収容人員330人と地元上位規模で運営されていた。自家掘りの源泉を利用した温泉、料理へのこだわりに加え、広大な庭園を備え四季折々の風情を楽しめる温泉旅館として全国的にも一定の知名度を得て、95年4月期の年収入高は約14億1700万円を計上していた。
しかし、景気後退や消費者嗜好の変化などにより、その後の業況は減収傾向で推移。北陸新幹線の開業効果で一時的な業況回復は見られたが、損益面では赤字決算が続く厳しい経営に陥っていた。2020年4月期の年収入高は4億円を割り込む水準にまで落ち込んでいた上、2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大で商環境は急激に悪化。同年6月末には従業員を解雇し、以降は休館状態が続いていた。
こうした中、エイチ・アイ・エスが推進する「ホテル・旅館再生支援」プロジェクトの第1号案件として旅館施設の再生が行われることとなり、施設不動産は21年6月に同社グループに売却されていた。以降は実質休眠状態だったが、最終的な債務整理のため今回の法的措置となった。
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