石川県輪島市など8市町にまたがるエリアは、世界農業遺産に「能登の里山と里海」として認定されている。輪島市は遺産に認定された農業にまつわる景観や文化などの地域資源をPRし、誘客を拡大しようと、観光施策を強化している。4月から定期観光バス「わじま温泉郷号」を運行しているほか、昨年初開催して好評だった千枚田をLEDの電球で照らすイルミネーションイベントを昨年より期間を延ばして今年も開催する。
世界農業遺産は、農業の営みとそれにかかわる景観、文化、生物多様性などに富んだ地域を認定、継承する制度。国連食糧農業機関が認定する。日本では、「能登の里山と里海」(輪島市、七尾市、珠洲市、羽咋市、志賀町、中能登町、穴水町、能登町)と、「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県佐渡市)が昨年6月に認定されている。
能登の里山と里海が広がるこのエリアには、千枚田などの景観、神子原米や能登野菜などの農産物、揚げ浜式製塩や海女漁などの伝統技法といった豊かな地域資源がある。特に輪島市の白米千枚田は、国の文化財名勝の指定を受け、日本の棚田百選に入るなど美しい景観で知られている。
定期観光バスのわじま温泉郷号は、輪島市が補助金を交付し、北鉄奥能登バスが運行している。「輪島魅力発信人」と称する案内人が同乗し、千枚田をはじめ農業遺産にまつわるスポットなどを案内。輪島、能登空港、金沢を起点とし、予約制で毎日運行する。
わじま温泉郷号には、約700年の歴史を持つ總持寺、強風を避けるために間垣をめぐらせた景観などを巡り能登の風情を感じるコースと、輪島の朝市、白米千枚田、揚げ浜塩田などの伝統文化に触れるコースの2コースがある。
運行期間と料金は、總持寺・間垣を巡るコースが11月3日まで(9月11〜15日運休)で、道の駅輪島、能登空港の出発で大人4900円。朝市・千枚田を巡るコースは11月4日までで、道の駅輪島の発着、または能登空港の到着で大人5900円。
白米千枚田をLEDの電球で照らすイルミネーション「あぜのきらめき」は11月10日から来年2月17日までに開催する。昨年は11月10日〜1月9日の開催だったが、来場者数が約2万5千人に上った。幻想的に浮かび上がる千枚田のあぜ道の中を散策できるとあって好評だった。
LED電球は昨年は1万2千個を使用したが、今年は2万個に増やす計画。電球1個ごとに太陽光の充電パネルが付属し、環境にも配慮されている。開催期間中には輪島市街地から臨時バスも運行する。
輪島市交流政策部観光課誘客推進室の中谷武史室長は「輪島観光の下期の目玉はあぜのきらめき。輪島を訪れる商品の企画、販売をお願いしたい」と話す。旅行者がメッセージを書き込んだLED電球を千枚田に自ら設置できる宿泊プランも旅館・ホテルから販売される予定。
千枚田を彩るイルミネーション