観光庁は来年度、旅館街の再生策を探るための調査事業を実施する。観光地や温泉地の旅館街には、バブル期の多額な借り入れが重荷になっていたり、旅行ニーズの変化、外国人旅行者の受け入れに対応できずにいたりする旅館が少なくない。調査事業では基礎データとして全国の旅館・ホテルの経営実態を把握するほか、再生に成功した旅館街の分析などを行いたい考えだ。
地域観光の活性化に向けて旅館街の再生が喫緊の課題となっている。しかし、旅館経営の実態の把握が不十分なことから、来年度予算案に旅館街再生基盤づくり事業として4300万円を計上した。
経営実態の調査は、観光地や温泉地の旅館だけでなく、都市部のホテルを含めて2万軒弱程度を対象とする予定。損益や資金調達などの財務状況、客層や誘客手法、客単価、稼働率といった営業状況についてアンケート調査を行う。地域間、産業間での比較分析などを通じ産業構造上の課題や地域の特性を明らかにする。
旅館街の再生に成功した事例の調査では、全国5カ所程度で現地調査を行う予定。各地域が再生の方向性を見出す資料として活用できるように分析結果をまとめる。
調査事業について観光庁観光産業課の鈴木昭久課長は「宿泊業の構造改善を議論しようにも、現状では指標となるデータが限られており、全体像を捉えられる資料が必要だ。成功例の分析結果と併せ、金融、税制を含めた施策の立案に生かしたい」と話している。