観光コンテンツ開発も支援 USEN-NEXT Tourism Design Lab. 所長 馬淵将平氏に聞く


馬淵氏

訪日客向けグルメサイト 宿泊施設向けDXを展開

 ――USEN―NEXTツーリズムデザインラボとは何か。

 「店舗BGMから発展してきたUSEN―NEXT HOLDINGS傘下の事業会社25社が持っている各種技術、ソリューションを、横断的に一元化して、日本の観光産業界に役立つサービスとして提供していこうと2019年に立ち上げた研究所だ。ちょうど東京2020オリパラ前の時期で、当グループが持つインバウンド客向けのサービスを大々的に展開していくつもりだったが、コロナ禍で対外的には活動停止の状態になっていた。ただ、必ず訪れるインバウンド再開の時期に向けて粛々と準備は進めてきた」

 ――具体的にはどのようなソリューションがあるのか。

 「例えば、USENが提供する観光地、商業施設向けの多言語翻訳・館内アナウンス『USENおもてなしキャスト』(平時の館内インフォメーションや災害非常時のガイダンスを多言語で翻訳テキスト表示する一連のシステム)は、店舗施設スタッフと訪日外国人のさまざまなシーンでのコミュニケーションを円滑にする先進的な架け橋ソリューションとして期待されている。また、USEN Mediaが2015年に開設した訪日外国人向け飲食店紹介・予約サイト『SAVOR JAPAN(セイバージャパン)』は、英語、中国語の簡体字・繁体字、ハングルに対応している。料理人掲載数最多の国内向けグルメメディア『ヒトサラ』で培った1万5千店の飲食店とのつながりを生かし、19年にはアクセス数、UU数、PV数で国内ナンバー1サイトとなっていたのだが、コロナ禍で正規契約店が大きく減るなど苦戦していた。コロナ禍中は記事・動画コンテンツの拡充を進め、英語版グーグルや台湾版ヤフーで1500件以上の記事が上位表示されるSEOに強いサイトになった」

 ――社長を兼務されているアルメックスは、宿泊施設向けの製品、サービスを数多く展開している。

 「ホテル・病院・ゴルフ場向けの自動精算機のシェアは75%。宿泊特化型チェーンホテル、ファッションホテルなどの宿泊施設顧客は8千棟ある。KIOSK(セルフチェックイン・システム)、PMS(ホテル管理システム)、VOD、予約アプリなどを提供している。医療機関向けDXソリューションでは、コロナ禍における非対面・非接触ニーズを捉え、病院向け自動精算機のシェアを過去5年間で10%以上伸ばすことができた。宿泊施設向けでは、コロナ禍の長期化による影響は受けたものの、今後はインバウンド再興、観光立国の復活によるホテルDX需要の力強い回復が期待される。当社製品、ソリューションにより一気通貫でホテルのフロントオペレーション改革をご支援していきたい。当社のDXは小規模旅館や簡易宿所向けPMS、セルフチェックイン機を強化している。これにより、宿泊業界で深刻な問題となっている人手不足に対応できる」

 ――ツーリズムデザインラボは、地域の観光コンテンツ開発の支援も行っている。

 「22年度は、観光庁の『地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業』などで5地域のお手伝いをさせていただいた。例えば福井県では、坂井市、あわら市、永平寺町と連携して『福井県広域ウェルネス推進協議会』を組成。USEN Mediaが事務局を担当した。DMOさかい観光局が旅行商品の造成や地元団体のハブ機能を担われた。地元の著名人とウェルネス専門家を集めてシンポジウムを開催し、福井県の魅力が『農産物』『海産物』『自然』『温泉』『禅』といったウェルネスツーリズム関連の観光資源にあることを確認。地産地消の食材として『甘エビ』を使った『食』のコンテンツ作りを漁業組合、地元料理人と行った。開発した料理『甘エビのカルパッチョ、バーニャカウダ、ケークサレ』は、『ヒトサラ』と『SAVOR JAPAN』で情報発信した。特別な場所、旬の食べ物、特別な体験プログラムといった高付加価値の特別体験コンテンツをテーラーメイド型で提供することで、『日本のウェルネスといえば、福井』と連想されることを目指している」

 

 まぶち・しょうへい 1995年日本興業銀行入行、2007年ゴールドマン・サックス証券入社。M&Aファイナンスなどを担当。09年USEN常務執行役員CFOに就任し、事業の選択と集中による経営再建を担う。13年アルメックス代表取締役社長就任、約10年にわたり非対面、非接触、省人化ソリューションの強化に尽力。17年、USEN―NEXT HOLDINGS常務取締役CFO就任(アルメックス社長兼任)。

【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

 
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