観光による地方創生で日本を元気に 野田聖子 内閣府特命担当大臣に聞く

  • 2022年1月1日

野田聖子大臣

観光は次の日本経済の担い手

ポテンシャル大きい、もっと自信もって

 昨年発足した岸田内閣で内閣府特命担当大臣(地方創生 少子化対策 男女共同参画)に就任した野田聖子衆院議員に「観光による地方創生」をテーマに語っていただいた。ホテル業に従事する経験を持つ野田氏は、地方創生における観光業の重要性を強調。コロナ禍で厳しい状況にある事業者を激励した。(大臣室で。聞き手は本社取締役編集長・森田淳)

 ――地方創生担当相の立場から、現在日本が抱えている問題点についてどのように認識されていますか。

 地方創生に限らず、現在日本が抱えている大きな問題は、少子化による人口減少です。

 少子化といっても、ただ単に子どもが生まれないということではなく、人材がいなくなるということです。さまざまななりわいを起こしても、それを続けられるパワーがなくなるということ。地方の場合、そこがネガティブな意味でフロントランナーなんです。

 それをどうにか止めたいと、政府は取り組んでいるわけですが、なかなか大変なことです。

 だから、関係人口。そこに生まれていなくても、住んでいなくても、その土地に関わる人をしっかりつくろうという取り組みを進めているわけです。

 取り組みの一つとして、観光が大きな柱になると思います。

 ――地方もそれぞれ魅力的ですが、多くの若者が都会を目指します。

 外から見ると魅力的ですが、中にいる人にとってはそれが当たり前に映るんですね。

 私の地元は岐阜県岐阜市ですが、市中に長良川が流れています。県庁所在地のど真ん中に奇麗な1級河川が流れているのは全国でも珍しいですよね。川では宮内庁の職員の鵜匠(うしょう)さんが鵜飼をやっている。

 そんなのは本当に希有(けう)なのに、毎日見ているとみんな慣れてしまって、その本当の価値が分からなくなる。価値に気付いてもらうことは、すごく大事なことだと思います。

 今、お話しされたように、地方は確かに魅力的ですが、皆がそう思っているだけで、どう価値を作るかという具体的な取り組みが、まだまだ足りていなかったように思います。

 ――地方創生における観光の重要性について改めて。

 私が今まで取り組んできた政治活動で言えば、一丁目一番地が観光です。

 そもそも私は政治の仕事をする前、帝国ホテルに勤めていました。今から三十数年前。あの頃は観光業、ホテル業といった業界は、日本経済の中では決して主役ではありませんでした。主役は鉄や自動車、家電などを生産している製造業。この新聞を読んでいる観光業、ホテル業の人たちは、当時は社会からあまり期待されていなかった。むしろこれらの業界に子どもが就職するのを素直に喜ぶことができない親も多かったと思います。

 そんな時代に私は帝国ホテルに就職しました。最初の配属は客室掃除。ホテルはワンフロアに何十室もあって、そこを3人1組で掃除します。そこで私はシビアな体験をしました。素手で便器を洗うとか、落ちている体毛を手で拾うとか、当時の私にはとてもつらかったんですね。

 そのときに、一緒に働いていた先輩から「この部屋の値段はいくらだか知っているか」と聞かれました。スタンダードのツインだったと思います。「5万円だぞ」と。今から三十数年前の値段です。

 その時に「自分たちの掃除によって、単なる部屋に付加価値がついてそんなお金になるんだ。頑張ろう」と強く思いました。

 そうこうしているうちに時代が変わり、安い人件費と長時間労働で、クオリティーの高い物の薄利多売を得意とする製造業から、今度は金融業に主役が移るんですね。そしてバブルに。でも、観光業は相変わらず冷遇されていました。

 ホテルに勤めた後、県議会議員になりました。観光産業委員会に所属しましたが、そこでも観光は正当な評価がされていないと感じました。

 バブルが弾けて、日本の体制もさまざまに見直されてきました。次なる道ということで、ようやく観光にもスポットが当たってきました。2008年に観光庁ができ、外国人旅行者に対するビザの緩和など、観光立国の政策が打ち出されました。ようやく観光が正規軍に迎えられたという感じです。

 今は新型コロナウイルスで低迷していますが、コロナ前の日本経済のけん引役、少なくとも銀座のデパートの消費のけん引役はインバウンドでした。コロナの終息後、ウィズコロナの中でも、次の日本経済の担い手として期待されているのが観光ということは間違いありません。

 ――観光による地方創生を進めるに当たり、受け入れ側の行政や事業者が取り組むべきことは。

 地方が廃れる原因の一つは、若い女性がどんどんいなくなってしまうことです。

 でも、観光業の主役と言えば、旅館の女将さんを代表とする女性ですよね。だから、事業者にとっては、まずは女性の雇用の固定化。何があってもすぐ首にしない。景気が悪くなればすぐに辞めさせる、というのでは、貧困の問題にもつながっていきます。女性の雇用を安定化させる取り組みを観光業は進めるべきです。

 今はコロナで苦しめられています。しかし、苦しい時のために雇用調整助成金があります。雇用を継続して、育成して、その人を観光のエキスパートにする。プチ女将さんのような人をいっぱい育ててほしい。観光業が、女性がキャリアを積むために非常に有効だといわれるようになってもらいたい。

 ――地方には都会との賃金格差など、さまざまな問題があります。

 若い家族が住む場所を決める際の決め手となるのは、必ずしも仕事だけではないんですね。子どものことが大きいと思います。

 今どきは偏差値教育で、都会の方が良い偏差値を取れるという考え方に影響されて都会に住む人も多い。廃校が続くような地方では子どもが十分な教育を受けられず、格差社会の犠牲者になってしまうのでは、と親が心配に思うのも、ある意味納得できます。

 地方にはいわゆる偏差値教育ではない、何かに特化した学びを得られる場所があってもいいと思います。

 もう一つは医療、福祉。家族の健康を守れることが大事です。

 当たり前のことが、実はすっぽりと抜けていたりします。それで住民に来い、来いといっても難しいですよね。子を持つ親に安心感を与えられる場所であってほしい。住んでいる人が自分の地域のことを好きにならないと、観光客も来ませんよね。

 ――国内観光の魅力と可能性について。

 国内需要が減っているのは日本人の人口が減っているからだと思います。高齢化も原因。高齢になれば体が不自由になってくるので遠出もできなくなります。これからも人口が減るので消費者は減っていきます。

 一人一人のニーズに合わせた対応を考えるべきです。マーケットをしっかり見ること。旅館・ホテルであれば、1階は家族用、2階はお1人さま用とか。「あなたに合う部屋があります」というセールスをする。良い意味での差別化が必要ではないでしょうか。

 日本にはゴージャスな観光というのが少ないですよね。外国の大金持ちが来て、地域にたくさんのお金を落としてもらう。1人の人が100人分のお金を1日で落としてくれれば、すごい経済効果ですよね。

 帝国ホテルにいた時、16階(特別階)を貸し切りにして、ジュラルミンの大きいスーツケースに1万円札がいっぱい入っていて、パーッと払っていった王族がいました(笑い)。そういう人たちにもたくさん日本に来てもらえるような道も作っておかなければと思います。

 私たちは自分たちのことを過小評価しすぎているのではないでしょうか。日本にはまだまだたくさんの魅力的なネタがありますよ。

 私の地元の岐阜県知事は先進的な人で、地元の関ケ原をゲティスバーグ、ワーテルローとともに世界三大古戦場の一つだとストーリー化しまして(笑い)。地元の県民もあまり関心がなかった草ボーボーの野っ原だったのですが、どんどん奇麗にして。今は立派な観光資源になりました。

 ――コロナ禍で疲弊する観光事業者に激励のメッセージをお願いします。

 ピンチはチャンス。オイルショックのとき、日本は省エネ技術を遮二無二に考えて、結果それが世界の標準になって、一定の地位を確立したんです。

 今はコロナで停滞していますが、いずれ観光が復活し、経済の中核になることを信じて疑いません。

 地方において、観光以上に波及的な利益を生む産業はなかなか見つからないのではないでしょうか。観光という柱ができることで、衣食住と、そこに付随する産業へと相乗効果が生まれます。自分たちのポテンシャルは大きいのだと、もっと自信を持つべきです。

野田聖子大臣

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