
地震の影響で北陸新幹線など運休が相次いだ(1月2日朝、JR富山駅)
石川県能登地方を震源とする地震を受けて、北陸銀行や北国銀行などは4日から被災地の一部店舗を臨時休業する。店舗建物の損壊や破損、周辺事情を勘案して決めた。営業可能店舗では金融上の措置から被災者への預金払い出しに応じるほか、相談窓口を設けて事業者や個人向けの資金需要にも対応する。
石川県の北国銀は3日、地震の被害が甚大な珠洲、穴水、松波、輪島、門前の5店舗について窓口とATMをともに休業すると発表した。このほか、宇出津、七尾、和倉、羽咋など11店舗ではATMのみ稼働させる。ともに営業開始時期は未定。
北陸銀は石川県能登地区にある珠洲支店と輪島支店について4日から店舗の臨時休業を決めた。珠洲支店はATMのみ稼働させるが輪島・伏木支店は停止する。また、石川、富山両県で5カ所の店舗外ATMを臨時休業とする。これらの期間は当面の間とし、営業再開の際は改めて案内する方針。
能登地区に本店を構えるのと共栄信用金庫(七尾市)と興能信用金庫(能登町)も店舗の臨時休業を余儀なくされた。のと共栄信金は輪島支店の窓口業務とATMについて、設備被害や電力などインフラの混乱とともに顧客や職員の安全確保から4,5日の臨時休業を決めた。
興能信金は珠洲、松波、輪島、門前など8店舗と出張所3カ所について窓口とATMを臨時休業する。営業開始時期は未定だ。
はくさん信用金庫(金沢市)は地震直後に鳴和支店が壁にひび割れや窓ガラスの破損などが確認され、ATMを臨時休業した。
北陸労働金庫は4日から輪島支店を当面休業し、珠洲市役所内のATMも稼働を止めた。
金融機関の被害は石川県以外にも広がった。北陸銀は富山県高岡市の伏木支店を4日から窓口業務、ATMともに臨時休業とした。富山第一銀は4日から建物の損壊に伴い富山県内の北の森支店と立山支店の営業場所を、それぞれ近隣の岩瀬支店と上市支店に変更した。
郵便局は石川県の七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、中能登町、穴水町及び能登町に所在する全局(簡易郵便局を含む)について、1月4、5日の窓口業務を休止する。
これに先立ち、北陸・関東財務局と日本銀行の金沢・新潟支店は1月2日、地震被害で災害救助法が適用された石川、富山、福井、新潟県の被災者らに金融上の措置を適切に講ずるよう金融機関などへ要請した。対象は、預貯金取扱金融機関と証券会社、生命保険・損害保険会社、少額短期保険、電子債権記録機関。
預貯金取扱金融機関には、預金証書や通帳を紛失した場合の払い出しや届出印のない場合は拇印で応じるなどを求めた。証券会社には、有価証券紛失の際の再発行手続きや預かり有価証券の売却と解約代金の即日払いへの可能な限りの対応。生損保・少短各社には、契約内容が確認できれば保険証券や届出印がなくても迅速な保険金の支払いと保険料払い込みの猶予など。
金融機関は同月4日から緊急対応する。北国銀は営業可能店舗で運転免許証など本人確認証を使って預金の払い出しや各種相談窓口を設置して資金ニーズに対応。住宅ローン新規実行手数料(計約23万円)のほか、消費者ローンや事業性融資の条件変更手数料を免除する。
のと共栄信金は預金の払い出しや応急資金の手当て、融資返済猶予など相談窓口を開設。興能信金も預金払い出しのほか地震被害に関する特別相談窓口を設置し、取引の有無を問わず事業者や個人の対応にあたる。
はくさん信用金庫は緊急支援相談窓口を設置し、災害復旧や資金繰りへの対応する。
富山県では北陸銀行や富山銀行、富山第一銀行、富山信用金庫が相談窓口を設置し、事業資金や個人のリフォームローンなどに特別融資で対応。富山銀は復旧のための運転・設備資金について基準金利から0.2%優遇する。
一方、経済産業省は3日、政府系金融機関などに対し被災した中小企業や小規模事業者向けの貸付業務の対応を要請した。対象は日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会。個別企業の実情を踏まえ、適時適切な貸出、担保徴求の弾力化、コロナ融資など既往債務の返済猶予など条件変更について柔軟に対応することを求めた。
この地震は1月1日16時10分ごろ、石川県の能登地方を震源に発生。気象庁によると、最大震度7で地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.6を記録した。地震は北海道から九州地方にかけて震度6強~1を観測。この地震により北陸地方を中心に津波や火災、ビルや家屋の倒壊など各地で被害がでた。2日以降も余震が続いている。
石川県は4日、県内の死者は同日8時現在で78人、負傷者は330人、避難者数は3万4173人と発表。総務省によれば、負傷者は新潟、富山、福井、岐阜、兵庫県、大阪府などでも確認された。
経済産業省の発表によれば、地震直後から石川、富山、新潟県など広範囲に停電が発生。断水や道路の地割れなどライフラインに影響がでた。また、航空や鉄道など公共交通機関で運休も相次いだ。内閣府は1日夜、新潟、富山、石川、福井県の35市11町1村に対して災害救助法の適用を決めた。
気象庁は1日午後の緊急会見で、「揺れの強かった地域では家の倒壊や土砂災害の危険がある」と警戒を呼び掛けた。津波が観測されており、「甚大な被害が発生する恐れがある」として、今後の余震や雨にも注意するよう求めた。気象庁はこの地震を「令和6年能登半島地震」と定めた。
岸田文雄首相は1日夜、「特定災害対策本部を非常災害対策本部に格上げし、私が本部長を務める」とし、自身が陣頭指揮を執って震災対応に当たると述べた。
【記事提供:ニッキン】