環境省、温泉旅館などの温暖化対策に補助金


 環境省は、温泉熱や温泉採取により発生するメタンガスなどの「温泉付随ガス」を活用する施設を整備する事業者に対し、合計1億円を補助する方針を固めた。来年度予算概算要求に盛り込んだ。昨年東京・渋谷で発生した温泉施設の爆発事故をきっかけに、改正温泉法では温泉付随ガスの分離など安全対策が強化されたが、同省では安全対策と併せて環境対策も推し進めたい考えだ。

 今年10月1日に施行される改正温泉法の付帯決議で、安全性確保のために温泉から分離されたメタンガスの利活用を「地球温暖化防止」「資源有効活用」の見地から推進するよう決まったことから、来年度補助事業を行う方針となった。

 補助対象となるのは、(1)温泉熱を空調や給湯に使う「ヒートポンプ」導入などの温泉熱の熱利用(2)温泉付随ガスの熱利用(3)温泉付随ガスを使った発電と発電に伴い発生した熱を給湯などに利用するコジェネレーション(熱電併給)(4)温泉熱の発電利用──にかかわる施設を導入する場合。(1)の場合、事業費の3分の1、その他の場合は2分の1までを限度に助成する。

 同省自然環境局自然環境整備担当参事官室温泉保護利用係の試算では、1時間当たり4立方メートルのメタンガスを利用するボイラー設備、ガス供給設備を設置するのにかかる経費はおよそ600万円と安くはない。しかしボイラーを1リットルあたり100円の灯油で動かす場合と比べると、メタンガス利用の場合、年間120万円程度安くすむという。燃油価格の高騰がボイラーを多用する宿泊、温浴施設の経営に影響を与えているが、分離したメタンガスを活用できれば、燃油価格に左右されることも少なくなる。

 「メタンガスは温室効果が二酸化炭素の約21倍。資源として活用できれば温暖化防止にも有効」と同係の岩本宏幸氏。同係では現在、分離した温泉付随ガスの利活用について年末をめどにガイドブックを出すことを予定しており、来年からの事業補助開始に向け事業者の理解浸透を図りたい考えだ。

 分離した温泉付随ガスについては、メタンガスなどの「可燃性天然ガス」の場合、鉱物資源の開発、利用とその権利について定めた「鉱業法」の適用範囲になる。そのため実際にメタンガスを活用するには、地域の経済産業局に届け出をする必要がある。しかし改正温泉法で温泉付随ガスの分離が定められた今日、資源の有効利用や環境保全の見地からだけでなく、ボイラー設備などの効率運用の面からも、分離したガスの活用を検討する価値はありそうだ。

 
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