消費拡大へ多様性と付加価値を、JNTOが訪日シンポ


JNTO特別顧問のアトキンソン氏が講演

 日本政府観光局(JNTO)は8日、「訪日インバウンド新潮流~持続可能な観光を目指して」と題したシンポジウムを東京・銀座の観世能楽堂で開いた。自治体や観光組織、観光事業者などの観光関係者が参加。著書「新・観光立国論」で知られるJNTO特別顧問、デービッド・アトキンソン氏が、自然を生かしたアクティビティーの整備などで訪日外国人の旅行支出の引き上げに取り組むべきと提言。有識者からは、インバウンド振興に向けた観光地域づくりの事例なども発表された。

 シンポジウムは、地方への誘客拡大、欧米豪市場の開拓などの課題を踏まえて開催。JNTOの松山良一理事長は「国際競争は激しく、従来の延長線ではない、新たな取り組みが必要」とあいさつ。来賓として出席した観光庁の瓦林康人審議官は「個人旅行化、リピーター化、コト消費の中で、地域の受け入れ態勢を外国人目線で見直してほしい」と述べた。

 JNTO特別顧問のアトキンソン氏は、「観光業の生産性をどのようにして上げるべきか~デスティネーションの作り方」と題して講演。「観光の生産性とは、旅行支出を引き上げること。観光地や観光施設の付加価値を高めれば、観光収入が増えるチャンスが出てくる」と指摘した。

 旅行支出の引き上げでは「一番のポイントは多様性。寺社仏閣、和食ばかりでは、長期滞在、消費拡大につながらない。日本ほど自然に多様性のある国はないが、ほとんど認知されていない。文化観光に自然観光を足すと、誘致できる層が広がるほか、アウトドア・アクティビティーなどにより多くのお金を使ってもらえる。日本の自然観光の伸びしろは大きい」(アトキンソン氏)。

 旅行支出を引き上げる観光地域づくりについてアトキンソン氏は、「自然や文化財がそこにあるという本質の価値だけでなく、付加価値を高める必要がある。アクティビティー、ガイド、解説案内、飲食店、宿泊施設などの付加価値がなければ、お金は落ちない」と述べ、情報発信だけでなく、観光資源の付加価値向上、受け入れ環境の整備に注力し、持続的な発展を目指すよう提言した。

 観光地域づくりの事例発表では、長野県山ノ内町のまちづくり会社、WAKUWAKUやまのうち社長の岡嘉紀氏(地域経済活性化支援機構ディレクター)が発表。官民ファンドの地域経済活性化支援機構、地元の八十二銀行などが設立したファンドの投融資を受けて実施した事業などについて説明した。

 山ノ内町は、スノーモンキーで知られる地獄谷野猿公苑が人気で外国人客は増加していたが、必ずしも宿泊につながっていなかった。これらの課題解決に向け、湯田中温泉の「かえで通り」の遊休物件を改修し、2016年にビアバー&レストラン、カフェ、低価格のホステルなどを開業。外国人に滞在してもらえる環境づくりを推進した。

 ファンドから資金を調達した関連会社のWAKUWAKU地域不動産マネジメントが、遊休物件を取得または賃借して改修し、地域の若者や新規事業者に賃貸する事業の枠組みを構築。WAKUWAKUやまのうちは、起業の初期段階を社内事業として支援するほか、商品企画や情報発信を担っている。岡社長は「この2年ほどの取り組みで、外国人の宿泊は増えている。地方でも欧米豪からの誘客に取り組むことはできる」と語った。

 シンポジウムではこの他にも、海外観光地の事例紹介、持続可能な観光産業をテーマにしたパネルディスカッションなどが行われた。 

 
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