旅館協会、旅館の会計基準を策定へ


 日本旅館協会(針谷了会長)は、旅館業の収益改善を推進するため、「旅館ホテル会計実務研究会」を立ち上げる。旅館業には、他社との比較検討や統計調査を可能にする会計基準がないことから、経営規模を問わず旅館にとって使いやすい統一的な様式の策定に取り組む。経営状況に応じてスピード感を持った改善を促すため、月次決算の普及策なども検討する。今年度をかけて議論し、研究成果を全国の旅館に広めたい考えだ。

 欧米などのホテルには、統一の会計報告様式に基づき会計情報を作成し、経営管理や資金調達に活用する企業が少なくない。旅館業にはそうした統一様式はなく、サービス形態の違いなどからホテルの様式を加工せずに採用することも難しいとされる。

 針谷会長は、日本旅館協会の通常総会(6月15日)の中で、「欧米のホテルにはUSALIというユニフォーム・システムがあり、会計基準が統一されているが、旅館の多くは、税理士の指導の通りに作成しているだけで支出科目などもばらばら。他社と比較できず、自社の欠点などを把握できない」と問題点を指摘した。

 研究会では、月次決算の普及も検討テーマに位置づける。発生主義に基づいた経理処理など、月次決算の実施・活用手法を策定。毎月の経営実態を把握できるようにして収益改善への取り組みを促していく。

 研究会の座長には針谷会長が就任する。会員旅館・ホテルから委員4人を集め、7月下旬に初会合を開く。アドバイザーとして観光庁と商工中金の担当者、会計実務と宿泊業に精通した専門家にも出席してもらう。来年度には全国でセミナーなどを開催し、研究成果を旅館経営者らに広く紹介したい考えだ。

 旅館業の会計実務に関しては、観光庁が2013年度に有識者検討会を設置し、部門別損益管理の考え方を取り入れた簡易な管理会計支援ツールを作成したことがあるが、統一様式などの普及には至っていない。

 会計基準、月次決算のいずれも、中小規模の施設を含めて幅広い施設に導入、活用しやすい手法の策定を目指していく。さらにどのように普及を進めるかが課題。「普及にあたっては旅館経営者だけでなく、旅館に関わる税理士や金融機関などの関係者に理解を求めていくことも検討したい」(針谷会長)。

 会計実務研究会の委員は次の通り(敬称略)。

 石井敏子(東京都・行燈旅館、東京都支部長)▽桑野和泉(大分県・由布院玉の湯)▽佐藤勘三郎(宮城県・伝承千年の宿佐勘)▽渡邉玲緒(愛知県・海栄RYOKANS、全旅連青年部副部長)

 
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