改正通訳案内士法が4日に施行された。通訳案内士の業務独占規制が廃止され、誰でも有償での通訳案内が可能になったが、試験や研修を経て資格を持つ「全国通訳案内士」「地域通訳案内士」は、高度な能力や知識を有する者として、これまで以上の役割が期待される。このため全国通訳案内士では、資格取得の試験内容を見直すとともに、登録後の定期的な研修を義務付けた。
全国通訳案内士は、国家試験に合格し、都道府県に登録した者。高度な外国語能力、日本全国の歴史、地理、文化といった観光に関する高い知識などが求められる。従来の「通訳案内士」は全国通訳案内士とみなされる。
地域通訳案内士は、特定の地域内で業務を行い、地域の情報に精通した者。都道府県、市町村が単独または共同で定めた育成計画に基づいて実施する研修の修了などが要件。これまでの「地域限定通訳案内士」「地域特例通訳案内士」は、地域通訳案内士とみなされる。
全国通訳案内士、地域通訳案内士以外の無資格者も業務は可能だが、通訳案内士を名乗ることはできない。類似する「通訳ガイド」「日本(または特定の地域名)ガイド」「国家(政府)ガイド」「認定(登録)ガイド」などや、能力の高さをうたう「スペシャルガイド」なども認められない。
全国通訳案内士は、無資格者との質の差別化を図るため、2018年度試験から内容が一部変更される。変更について観光庁は試験に関するガイドラインを改正し、3月末までに公表する予定。
試験見直しの骨子は、試験科目への「通訳案内の実務」の追加。筆記試験では、旅行業や旅程管理など関係法令の基礎知識、イスラム教のハラルなどを含めた国ごとの生活文化、危機管理や災害対応などを問う問題が追加される予定だ。
すでに試験に合格し資格を持つ者には、追加科目の知識を補うため、観光庁が「経過措置研修」として19年度末までに研修を実施する。
全国通訳案内士には、登録後に5年ごとの定期研修が義務付けられる。研修内容は、旅程管理や災害時の対応など通訳案内に関する実務。研修は、要件を満たし、観光庁の登録を受けた団体などが実施する。
地域通訳案内士の資格要件となる自治体の研修内容などは、4日に告示された「地域通訳案内士の育成等に関する基本的な指針」に考え方が示されている。地域通訳案内士には、全国通訳案内士とは異なり、定期的な研修の義務付けはないが、指針には、自治体の自主的な定期研修の実施によって質の維持、向上を図ることが望ましいとされた。
一方、全国通訳案内士、地域通訳案内士の情報発信や活用促進の仕組みとして、観光庁は4日から、インターネット上で「通訳案内士登録情報検索サービス」を運用している。通訳案内士の基礎情報のほか、自己PR、得意分野など任意で登録した情報も公開されている。
検索サービスが利用できるのは、(1)旅行業者(2)旅行サービス手配業(ランドオペレーター)(3)旅館業法に基づく旅館・ホテル(4)労働者派遣法、職業安定法に基づく通訳案内士派遣業者(5)日本版DMO登録団体―のうち、観光庁に申請して承認された者。この他に自治体にも閲覧権限を付与している。