政府が4月24日に公表した2020年版「中小企業白書」は、新型コロナウイルス感染症の流行による中小企業への影響を分析した。感染拡大に伴う需要減少や休業で売り上げが計上できない場合、現金、預金などの手元資産で何カ月分の固定費を拠出できるかを試算した結果、宿泊業は平均6.6カ月にとどまり、「資金繰り難が深刻化する可能性」を示唆した。
財務省の「法人企業統計調査年報」の18年の統計値を基に、流動性の高い手元資産(現金、預金、受取手形、売掛金)が、年間で生じる固定費(役員・従業員給与賞与、福利厚生費、支払利息、動産・不動産賃貸料、租税公課など)の何カ月分に相当するかを分析した。
宿泊業の分析結果を資本金別に見ると、1千万円未満=2.9カ月▽1千万円以上~2千万円未満=6.2カ月▽2千万円以上~5千万円未満=8.8カ月▽5千万円以上~1億円未満=8.8カ月▽1億円以上~10億円未満=6.5カ月▽10億円以上=5.8カ月。
資本金の規模を問わない全産業(金融保険業を除く)の平均は22.0カ月。宿泊業以外では飲食サービス業が5.4カ月と資金に余裕がない。製造業、卸売業、小売業は12カ月以上だが、資本金の小さい企業などは厳しさがうかがえる。
中小企業白書における「新型コロナウイルス感染症の影響」の記述は、20年4月1日時点の情報を基にした分析結果。宿泊施設の客室稼働率の低下、訪日外国人旅行者の宿泊者数の減少などにも触れた。宿泊業にとどまらず、中小企業への対応として白書は「地域経済および世界経済の動向を十分に注視し、必要な対策を講じていくことが求められる」と指摘した。