中国最大の民泊予約サイト途家、滋賀県大津市、NECネッツエスアイの3者は12月14日、観光連携協定を締結した。中国からのインバウンド客誘致に取り組む。
宿泊施設登録件数100万軒以上を誇る中国最大の宿泊施設予約プラットフォームの途家(トゥージャー)は、2018年12月14日(金曜日)に、滋賀県大津市、NECネッツエスアイ株式会社と、観光連携協定の締結式を行いました。
大津市では、「えらばれる観光地」、「世界から人が集うまち」を目指し、観光事業者とともに訪日外国人観光客の誘致に積極的に取り組んでいます。
NECネッツエスアイ株式会社は、ネットワークをコアとする情報通信サービスの提供を行っており、宿泊施設向けネットワークシステムの導入、観光プラットフォーム基盤構築等さまざまなインバウンド向けサービスの開発・提供に取り組んでいます。
今回の締結式は、大津市役所にて行われ、途家から李珍妮(リー・ジェンニー)最高業務責任者(Chief Business Officer:CBO)、NECネッツエスアイ株式会社から木崎雅満執行役員、大津市から越直美市長が出席しました。
今回の連携協力の内容は、3者が包括的な連携のもと、観光誘客の拡大を通じて、地域経済を潤す取組みを実施することにより、お互いの発展に寄与することを目的としています。具体的な項目は以下の7つを挙げています。
(1)途家が運営するホームページ等の媒体で、大津市及びNECネッツエスアイ株式会社の関係する宿泊施設や観光情報を中国国内に発信すること。
(2)宿泊施設と観光関係サービスは、NECネッツエスアイ株式会社が大津市と協議して発掘を行うこと。
(3)中国ハイエンド消費者向けの着地型観光商品を3者共同で開発すること。
(4)着地型観光商品のデータ分析をNECネッツエスアイ株式会社が行い、それぞれの主体で活かすこと。
(5)データ解析に必要な情報は、要請に応じてお互いに適切な開示を行うこと。
(6)観光関連データを活用し、3者共同マーケティング・リサーチに努めること。
(7)その他途家、大津市、及びNECネッツエスアイ株式会社の3者間にて協議し、必要と認める事項に関すること
調印式の様子
越直美大津市長(左)、李珍妮途家最高業務責任者(中央)、木崎雅満NECネッツエスアイ執行役員
途家の李珍妮(リー・ジェンニー)最高業務責任者は、今回の大津市とNECネッツエスアイ株式会社との連携について、途家が中国で培ってきたデスティネーション開発のノウハウを用い、ウェブサイト利用だけでなく、ビッグデータ、SNS、KOL等の活用とさまざまな手法を用い、トータルマーケティングとして大津市の中国国内におけるプロモーションに取り組む意向を説明し、「景観だけでなく、大津の文化や歴史、お蕎麦などの食文化も紹介して、ハイエンド消費者だけでなく、ファミリー層にも来て欲しい」と語りました。
李珍妮(リー・ジェンニー)途家最高業務責任者
途家は、今回の大津市との観光連携協定締結に先立ち、2018年10月20日に長野県魚沼市と観光連携協定を締結しています。この提携により、途家は中国国内の自社メディアネットワークを活用し、魚沼市の魅力をPRするほか、同市と連携し、ハイエンド消費者の個人旅行者に向け「体験」をキーワードとした観光商品の開発や観光関連データを活用したマーケティングリサーチ、市内の宿泊施設の受け入れ体制の充実に向けた取り組みを進めています。
途家は、中国国内で民泊サービスを提供する企業の中でも、ハイエンドなセグメントをターゲットとした深い体験を求める顧客層が多いのが特徴です。一般的に、途家の民泊サービスを利用する顧客の消費単価は高く、中国の第1級都市(北京・上海・広州等の沿海大都市)、第2級都市(内陸の中型都市)、第3級都市(内陸の小都市)を含めた市場の平均消費単価は350~400人民元(約5,700円~6,500円)ですが、第1級都市と第2級都市だけを対象とした平均消費単価は600人民元(約9,800円)以上となり、これは中国国内の4ツ星ホテルの消費単価に相当します。
2017年10月の国慶節の休暇シーズンでは、途家のサービスの利用状況は、一回で注文する価格は最高38,000人民元(約62万円)を筆頭に、1万人民元(約163,000円)以上の案件が100件以上ありました。「途家の顧客は、ファミリータイプの利用が多く、他の中国国内の類似の民泊サイトと比較すると、消費単価は2倍程度と考えています」(李CBO)。
民泊は、中国では急成長をしている市場で、途家は地方行政と連携して、民泊市場の拡大に寄与しています。例えば、陝西省西安市政府と連携して、民泊の利用者数を2017年から2018年にかけて5倍に伸ばした実績を持っています。現在、西安市では今後3年間で新規に2万軒の民泊を増やす計画に取り組んでいます。この他にも、途家が中国で民泊を盛んにしたデスティネーションとしては、雲南省の大理、福建省の厦門(アモイ)などが挙げられます。「途家は、中国の旅行者が何に惹かれて旅をするか、に熟知しているため、この中国における成功体験を、日本において横展開したいと考えています」(李CBO)。
中国から日本を訪れる訪日客数は、2017年は735万人に拡大し、毎年、個人旅行者の割合が増えています。初めて日本を訪れる中国人旅行者は、多くは大阪・京都・東京のいわゆるゴールデンルートを旅行しますが、リピーターになると、地方都市を中心としたデスティネーションを訪れる傾向が強くなってきています。
李CBOは、「大津市の魅力として、人気のデスティネーションの京都からアクセスが良く、快速電車だと9分で到着します。混雑した京都とは違い、大津では“癒し”を得られます。観光要素としても、琵琶湖やお寺など、中国との歴史の繋がりのあるお寺もあり、観光素材は十分に魅力があります。中国には、『以老帯新』(老いた者が新しい者を導く)ということわざがありますが、京都のような人気のデスティネーションに、地理的に近い大津を新しいデスティネーションとして宣伝する、という手法が効果的と考えています」と、大津市のプロモーション戦略について説明しています。
途家は、今回の締結式のタイミングにおいても、フォロワー50万人以上をもつKOLを招請して大津市の観光体験を取材しています。今後も、来春の桜のシーズンをターゲットにウェブサイトやSNSを用いて情報発信に取り組んでいきます。
「大津市は、癒しを求める中国の大都会からの旅行者にお勧めです。途家の中国におけるデスティネーション開発の経験と、ビッグデータを活用して、京都を訪れる旅行者に大津市の魅力を訴求する手法も考えています」と、李CBOは今後の取組みについて説明しています。
【途家(トゥージャー)について】
中国最大のオンライン旅行会社「Ctrip(シートリップ)」を親会社に持ち、2011年より事業開始。中国最大の宿泊施設予約プラットフォームとして、豊かで質の高い、よりパーソナライズされた宿泊施設を顧客に提供することを目指しており、現在、中国国内400の目的地と海外の1037の目的地をカバーし、オンライン宿泊施設は120万軒を超えています。「多人数、多日数、パーソナライズ、高カバー率」の宿泊ニーズを満たすことを目指し、グローバルに事業を展開しています。