携帯電話のGPS機能を使ったゲーム「コロニーな生活プラス」(コロプラ)と旅行、運輸業界がタッグを組んだ取り組みが進んでいる。じゃらんリサーチセンター(JRC)はユーザー向けのツアーの実施と観光地のPRを組み合わせた地域振興策を打ち出し、JR九州はタイアップした周遊きっぷを発売した。いずれもゲームを進めるために実際に移動することが求められるコロプラをきっかけに、旅行に出る人を増やそうとするものだ。
コロプラは移動距離に応じてもらえるゲーム上の通貨「プラ」を使い、ユーザーが自分の土地「コロニー」を育てるゲーム。ユーザーがGPS機能を使って位置登録をすると、その場所限定のバーチャルな「お土産」を購入したり、その場所を訪れた印として「スタンプ」を残したりできる。
コロニーの育成のほかに、全国のお土産やスタンプを収集するなど、ユーザーごとにさまざまな楽しみ方ができる点で人気を集めている。
また1キロ以上の移動からプラが取得できる気軽さも好評。首都圏の社会人などを中心に毎月20%以上の成長率で参加者が増えており、利用ユーザー数は10)月末で57)万人。20)〜40)代のユーザーが約8割を占めている。
このコロプラの人気に目を付けたJR九州が2日に発売したのは、乗り放題キップ「コロプラ★乗り放題きっぷ」だ。同きっぷは、指定のJR九州)駅で位置登録するとゲーム上の地図が塗りつぶされ、塗りつぶした駅の数によってゲーム上で使えるアイテムがもらえるコロプラ内のイベント「九州一周塗りつぶし位置ゲーの旅」に連動。きっぷについてくるカードに書かれた番号をゲーム上で入力すると、1日の塗りつぶしの上限回数がなくなったり、限定アイテムがゲーム上でもらえたりする。
発売期間は来年3月31)日まで。今月7日から来年4月2日まで利用できる。価格は2日間北部九州乗り放題が1万円、南九州が1万6千円、全九州2日間が2万2千円、全九州3日間が2万5千円。きっぷの販売目標は3千枚と通常の企画きっぷよりも多い。「コロプラとの相乗効果を期待して設定した」とJR九州広報室。発売1週間の出だしは好調という。
JRCは今秋から、コロプラユーザーを対象としたツアーとじゃらん誌面でのツアー内容の紹介を柱とした地域振興プランを地方自治体などに売り込んでいる。地方へのツアーを実施し、ツアーや訪問先について参加者の満足度を調べ自治体や観光地に提供する。併せてじゃらん誌面を使いコロプラユーザー以外の人に対象地域の情報を発信する。ユーザーを対象としたツアーは継続的に行い、観光客増加につなげる考えだ。すでに秋田県でのツアー実施とプロモーションが決まっているという。
プランの展開に先立ちJRCが8、9月にそれぞれ1回、福岡、佐賀、長崎にあるコロプラのお土産取得スポットや地元の体験観光施設をバスで回る1泊2日のモニターツアーを実施したところ、114人が参加。参加者の約8割が、旅行離れが進んでいるとされる20)、30)代だった。また参加者の約4割が通常から旅行をしている人だった一方で、過去1年間に日帰りを含めた旅行をしていない人も約3割参加しており、JRCは「コロプラが日ごろ旅行に興味、関心のない層を旅行に引き込むきっかけとなっている」(加藤史子研究員)とみる。
ツアー後に行った参加者の満足度調査では、ゲームとは関係のない、地域での体験プランや食事の満足度が高く、機会があればまた参加したいという声が多く寄せられた。加藤氏は「入口はゲームだが、最終的には旅そのものや地域での交流への関心を強めている」とコロプラツアーの成果を強調する。
コロプラと各企業のタイアップ企画は始まったばかりだが、旅行ニーズを喚起するきっかけの1つとして、注目を集めそうだ。