エコパークや世界農業遺産、観光のブランド化に活用


照葉樹林が広がる森と「照葉大吊橋」(宮崎県綾町)

照葉樹林が広がる森と「照葉大吊橋」(宮崎県綾町)

 世界自然遺産、世界文化遺産の認知度は高い。登録対象の保護や保存だけでなく、地域の観光振興にもつながっている。一方で、世界遺産と同じく国連の機関による認定でありながら、あまり知られていない制度に「ユネスコ・エコパーク」「世界農業遺産」がある。両制度の日本国内の登録地域は前者が5カ所、後者が2カ所。登録地域では、国際的な“ブランド”をPRして、観光地域づくりに生かそうと取り組みを強化している。

 ユネスコ・エコパークは、「生物圏保存地域」の日本での通称で、世界遺産と同じ国連教育科学文化機関(ユネスコ)の制度。世界自然遺産の目的が手つかずの自然の保護であるのに対し、生態系の保全と持続可能な利活用の調和、自然と人間社会の共生が目的。登録地域は114カ国、580地域に上る。

 日本に登録地域が誕生したのは1980年。志賀高原(長野県など)、白山(石川県など)、大台ケ原・大峰山(奈良県など)、屋久島(鹿児島県)の4カ所。ユネスコ・エコパークは環境教育の場としての活用が推奨され、エコツーリズムなどの観光振興に結び付く期待もあるが、注目される機会は少なく、登録地域も増えなかった。

 ユネスコ・エコパークの“看板”は埋もれていたのも同然だったが、今年7月11日、日本では32年ぶりとなる登録が決まった。登録されたのは、宮崎県綾町などで構成する綾地域。綾地域には日本最大級の照葉樹林が広がり、地元を挙げた保護活動が推進されてきた。循環型の有機農業の普及でも知られ、自然との調和を重視した地域振興が展開されている。

 登録について綾町役場産業観光課は「国際的に評価された地域づくりを国内外に発信できる。観光振興に関しても、照葉樹林をはじめ農業や工芸、生活文化が持っている価値をPRでき、グリーンツーリズムなどの活性化につなげたい」としている。

 他の登録地域も活用を模索している。志賀高原の中核地域となる長野県山ノ内町は7月27日、ユネスコ・エコパークの活用策を検討する協議会を発足させた。登録地域としての認識は地元住民の間でも薄く、長らく活用されないままだったが、綾地域の登録の動きなどを受けて活用への気運が高まっていた。

 観光振興への活用を探る山ノ内町役場観光商工課では、「志賀高原ではガイド付きのトレッキングツアーをはじめ自然と触れ合う観光プログラムが多く実施されている。ユネスコ・エコパークが知られるようになれば、環境教育をテーマとした修学旅行などの誘致拡大につながるのではないか」と期待する。

 認知度の低さでは似たような状況にあるのが世界農業遺産。国連食糧農業機関が02年に創設した制度。次世代に継承すべき農業活動、その基盤となる景観や自然環境を持つ地域を認定している。日本からは、「能登の里山里海」(石川県輪島市など)、「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県佐渡市)の2カ所が11年6月に認定された。

 能登の里山里海を構成する輪島市では、白米の千枚田、揚げ浜塩田などを地域資源として、認定地域であることのPRを強化している。世界農業遺産を知ってもらうための定期観光バスの運行やイベントの開催、旅行会社への商品造成の働きかけに力を入れている。

 輪島市交流政策部観光課誘客推進室は、「世界農業遺産を能登の観光と食のブランド化に生かしたい。14年度末には北陸新幹線が開業する。誘客の好機に向けて農業体験のプログラムや2次交通などを充実させ、認知度のアップに努めていく」と意欲を示している。

照葉樹林が広がる森と「照葉大吊橋」(宮崎県綾町)
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