真価問われる今こそ人財育成を
コロナショックは私たち旅館・ホテル営業者にとって制御不能な外部環境である。このような状況下では、想定される脅威に備え、自社の強みを磨き、機会を生かす戦略的思考が必要である。冷徹な分析的視点と前向きな楽観的視点を併せ持ち、アフターコロナを見据え、反転攻勢の計画を立て着実に実行する。つまり、生産性向上や高収益化の体質を目指し、事業転換や新たなシステムの導入の転機とすることも可能である。トレンドワードであるマイクロツーリズム、ワーケーション、サステイナブル、体験価値、トキ消費、地域交流などの新たな顧客ニーズに対応したサービスを開発し、ターゲット顧客を特定し、宿泊業として新たな可能性を打ち出すこともできる。未曽有の危機にあり真価を問われる今こそ、未来を見据え、宿泊業の主要利益を生み出す「人財」の育成が急務である。
私たち旅館・ホテル営業者の施設数は20年3月末時点で5万1004軒であり、前年度と比較し1502軒増加した。一方、従業者数は19年の約62万人から、20年には約55万人と11%減少している。また、事業者の企業規模をみると、全体の93・1%が中小企業という特徴がある。少子高齢化等を背景とする人手不足、中小事業者における教育制度の不在、そして生産性の低さによる低賃金などの実情により、離職率は依然として高い。
私たち一般社団法人全日本ホテル連盟では、「観光立国の実現」「会員ホテルの価値向上と成長支援」「地域の発展支援」等のMVVSを定め、それらに基づく事業方針により活動している。とりわけ近畿支部および青年部は、人財育成を活動の中核として捉えている。昨年開催した近畿支部報告会では、会員ホテルのみならず、DMOやパートナー企業の方々にも多数ご参加を賜り、今後さらなる連携を強化する。また、青年部では次世代の若手リーダーの育成を主目的とし、会員ホテルのオーナーに限定せず、現場のスタッフやパートナー企業も巻き込んだ活動を推進する。つまり、世代や職域を超えた交流により若手が育つ環境を創り出す。具体的には、人財交換や実践的な育成プログラムの実施、そして会の運営に若手が参画しやすい環境づくりを行う。
私たちの業界は私たちの手で価値を向上させるべきである。働く人たちの成長を支援し、職業価値を高めていきたい。そのために、業界内外における協力体制を構築できるよう、私たちが積極的に活動していく。
人財育成を起点とした共創価値にご関心のある方は、ぜひご一報いただきたい。
北原氏