【VOICE】持続的な観光業振興施策の展開が必要 公益財団法人日本交通公社観光政策研究部長 山田雄一

  • 2021年11月4日

山田氏

恒久的旅行減税の導入を

 2020年初頭から世界を覆ったコロナ禍が、観光業に与えたダメージは甚大である。しかしながら、コロナ前の状況に戻ったら「万事OK」という話とはならない。2015年から2019年までに、産業全体の現金給与総額は2.1%増大しているのに、「宿泊業・飲食サービス業」は逆に3.2%のマイナスであり、給与額も産業別でダントツの最低レベルにあるからだ(厚生労働省資料より)。

 すなわち、観光は地域活性化の期待に応える質の良い雇用を生み出すことができていない。

 観光業の給与が低迷するのは、不安定な需要の中で価格競争が常態化し、付加価値を高めることが難しかったことがあるが、今後も当面の間、インバウンド市場は制限されることを考えれば、さらに厳しい状況となるだろう。

 今後、観光業での雇用の質を上げるためには、コロナ禍から単純に回復するのではなく、良質で安定的な需要を確保し、それを原資に事業変革に取り組んでいくことが必要となる。

 私は、その方策として「旅行減税」の導入を提案したい。「ふるさと納税」によって、一つの経済圏が形成されたように、節税は、大きなインセンティブとなる。特に、重税感の高い人々は、その重税感を低めるために、積極的な行動を取り、それが良質な需要を生むからだ。

 例えば、所得税の20%まで、旅行費用の25%までを税控除できるようにすれば、約15兆円の観光消費を導出できる。2019年における国内旅行消費額(宿泊)が17兆円であることを考えたら、このインパクトは大きい。

 また、事業変革には、一定の時間と資金が必要であるが、恒久的な減税策として制度化されれば、持続性が担保される。これは、観光業に対する融資や投資を促すことにもなる。国は、所得税を3.8兆円使うことになるが、旅行消費の経済効果は2倍であるから、消費税だけでも単純に3兆円は回収できる計算となる。確定申告処理とすれば事務局も必要としない。対象地域や時期によって補助率を変えることで、ふっこう割的な機能をもたせることもできる。

 需要喚起だけならGo Toトラベルのような割引クーポン型でも可能であるが、予算に基づくものである以上、短期的なカンフル剤とはなっても、体質改善の治療薬とはなりえない。

 観光業の振興ために、減税で挑むというのは先例のない取り組みであるが、ポスト・コロナにおいて、観光が名実ともに戦略産業となるよう思い切った施策を期待したい。

 

山田氏

 
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