【DMO特別インタビュー】下呂温泉観光協会会長 瀧 康洋氏


瀧 康洋氏

E-DMOは認定を受け商品化が進む 持続可能な開発目標(SDGS)を目指す

2018年は全国的に自然災害に見舞われており、実際に被災した観光地、風評被害が発生した地域も多くなっている。下呂温泉(岐阜県下呂市)も被害を受けた地域。2011年から観光マーケティングを実践し、観光客と宿泊客がアップしている下呂温泉での対策と、日本版DMO法人としての取り組みを瀧康洋・下呂温泉観光協会長に今年度の状況を聞いた。

 ――今年度の宿泊客の状況は

 年度とは異なるが今年1月から6月までは好調。年度ということでは4月から6月は好調で7月は豪雨被害を受けながらも4月〜7月では対前年同期比で100・6%。1804人の増加。

比率はインバウンドのシェアが約15%まで上がってきた。7月までの数字で見ると国内客が前年を下回ったが、インバウンド客は好調をキープしたまま。インバウンドだけ見れば17%増加している。国内のLCC利用客を見込んだ地方へのセールスやキャラバン、インバウンドは韓国と中国が好調。台湾も堅調。東南アジアの新興国も伸びてきている。またヨーロッパの旅行会社の反応が良く、今後はヨーロッパからの来訪増加も期待できる状況となってきた。インバウンドでも下呂温泉の泉質の良さが決め手となってきた。なぜ下呂温泉が名湯と言われるかを外国人観光客に理解してもらえるようになってきており、国内客同様に下呂温泉の泉質の良さで勝負できるようになってきた。また下呂での食のレベルの高さも次に評価が高い。

 ――自然災害の影響は

 6月後半に発生した豪雨被害では下呂温泉街の被害は無く風評被害に近い状態。下呂市内の観光地が被害を受けたが、がんだて公園(小坂の滝めぐり)は県道も復旧し、三つ滝の遊歩道も一部通行可能となった。また御嶽山の登山道は濁河温泉にある小坂登山口からの新設ルートで登山が可能となっている。8月は台風、豪雨とキャンセルが多く例年を下回る見込み。下呂温泉観光協会のマーケティングデータを見るとJRの利用は約19%でJRの運休期間は自動車での来訪が増加しており、JRでなければならないという層以外は交通手段を変更したと考えられる。道路の復旧が早かったのが良かった。10月からは、いわゆるふっこう割がスタートする。単県での利用が可能となったことや、岐阜県では大手旅行会社、ネットエージェント、個人客と3つのルートで利用できる。団体から小グループ客、個人客まで幅広く利用できる。7月、8月の落ち込み分を取り戻せると考えている。これで回復すれば昨年の宿泊客数を少し上回れると考えている。集客や風評対策などはこれまで同様に県内、県外、海外などで、セールスやキャラバンを実施することで効果が見込める。このセールスやキャラバンはマーケティングデータに基づいて行っているので効果が得やすい。

 ――DMOについて下呂温泉は成功事例として各メディアで取り上げられることが多くなった。

 ありがたいことに取材や講演、下呂温泉への視察が増えている。これもある意味、DMO認定の効果と考えている。観光産業は以前より取り組み内容のレベルが上がってきているので、簡単に答えを求める取材には苦労している。複数の施策を実施しており、その施策が奏効して効果を挙げている。DMO事業でテストマーケティングができるので、効果のあった事業や集客が見込めた事業が残るという良いサイクルに入ってきた。また下呂市は地域型のDMOの成功事例であり、また地域によっては周辺環境や条件も異なるので、下呂のDMOで成功したからと言って、そのまま真似て実施しても上手くいかないことも話すようにはしている。

 ――今年度のDMOの取り組み

 今年度のDMO事業については、エコツーリズム推進事業、フリーペーパー制作事業、電動アシスト自転車レンタル事業などを実施する。下呂温泉DMOの目玉事業であるE―DMO。エコツーリズムを柱のひとつにして、エコツーリズムの理念をDMOにプラスしたE―DMOを進めている。今年4月6日に下呂市エコツーリズム推進協議会が策定した全体構想が、エコツーリズム推進法に基づき、主務大臣(環境大臣、国土交通大臣、文部科学大臣、農林水産大臣)から認定を受けた。認定により、環境省でのホームページや冊子でのPR、ガイド育成などの支援を国から受けられるようになった。また駅などからエコツアーポイントへの送迎も可能となった。下呂市内では、春夏商品として「小坂地区「小坂シャワークライミング」、馬瀬地区「季節を楽しむ 里山集落散策」、金山地区「金山巨石群 光の体験ツアー」、萩原地区「飛騨街道『萩原宿歴史探訪ツアー』」、下呂地区「合掌村で陶芸体験」などのエコツアーがある。とくに小坂地区はNPO法人飛騨小坂200滝が自立運営を目指していることからエコツアーのレベルが高く利用者も多い。夏はキャニオニングがメインだが、冬は凍った滝を散策する珍しいエコツアーを実施している。写真などで見る凍った滝は珍しいと感じてもらえるが気軽に観光できない。こういったエコツアーがあると実際に凍った滝を見学してもらえる。またキャニオニングもそうだが、エコツアーのポイントが小坂の滝であることが重要。下呂でないと体験できない貴重なエコツアーだから人気もあり、持続可能な商品と言える。

全体構想が認定を受けたことで無断でエコツアーを実施されないというメリットもある。自然を保護しながら持続可能な観光地を形成していける。

 ――フリーペーパー制作事業、電動アシスト自転車レンタル事業などは

 電動アシスト自転車レンタル事業は他の地域で普及したことから下呂温泉や市内の周遊観光用に導入する。当初は小規模スタートとなる見込み。フリーペーパー制作事業は、その名の通りフリーペーパーを発行して、広告収入を得る事業。5万部を発行する。DMO事業なので広告料金が非常に低く設定されている。今後はスマートフォンと連動したスタンプラリー実施も検討している。

また、昨年商品化したスイーツ事業も好調だ。地元シェフやパティシエが工夫を凝らして創作したパフェで、食べ歩きやテイクアウトしてもらうもの。第2弾のメニューも加わって9種類を6店舗で販売している。飛騨の名酒「天領」の甘酒、下呂温泉のお湯で作られた温泉玉子を使ったものなど美容や健康を意識している。

 ――今後の目標、課題は

 持続可能な開発目標(SDGS)を目指す。持続可能な開発目標(SDGS)は、国際連合開発計画(UNDP)が呼び掛けている目標で、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動。温泉資源や自然環境を守りながら持続可能な観光を進めていきたい。

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